今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

ゆみの単独行動

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「こいつ、貧民だぜ」

貧民街にやってきた人間が、貧民街にいる貧民のことを指差し、蹴っ飛ばしたりしてあざ笑っていた。

貧民は、貧民街から外のエリアに行ってはいけないと言われていた。しかし、貧民街の外に暮らしている人間は、外のエリアも貧民街の中もどちらも自由に行き来できた。貧民街の外にいる人間の中には、たまに貧民街の中にやって来て、うさ晴らしなのか、そこにいる貧民のことを蹴っ飛ばしたり、殴ったりしていた。普通の人間同士でそういうことをしたら、警察に捕まってしまうが、貧民に対して、そういうことをしても許されてしまっていた。殴られた方の貧民は、じっと我慢しているしかなかった。

ゆみは、貧民街の中を歩いていると、そういった光景に何度も出くわしていた。自分たちだって貧民なんかでなく普通の人間なのに不公平だと、そういった光景に出くわす度に思っていた。

次第に、そういった光景などに出くわしたくないという思いから、外に出歩きたくなくなってきていた。それでも、お母さんに皆と外で遊んでいらしゃいと言われると、コンテナの中から外には出るのだが、地上にいたくないので、1人ゴミが積み重ねられて出来た洞穴のようなところに引きこもるようになっていた。

「あいつさ、最近おかしくないか」

竜は、ほかの少年盗賊団だった子どもたちと表で遊びながら言った。

「ゆみちゃんのこと?え、なんで?おかしくないよ」

あゆみが竜に答えた。

「なんか1人でいつもいるし」

「それは、貧民なんかにされてしまってから、少し塞ぎこんでいるところもあるけど家でも元気にしているよ」

あゆみは、竜にゆみのことを弁解してくれた。

ゆみは、お母さんにお外で遊んでいらしゃいと言われて、コンテナの外に出かけたときはよく行く場所があった。それは、貧民街の中でも特に多くのゴミが集まったゴミの山があるところだった。そのゴミの山の間に細い道が自然と出来ていて、その道を進んでいくと、その先にゴミの山の中にポッカリと空いた洞穴みたいな空間があった。その空間の奥は、暗くひっそりしていて誰にも会うこともなく、1人でいろいろ考え事や想像していられる世界だった。

ゆみは、よくここに来て1人いろいろ想像して過ごしていた。

お姉ちゃんと一緒に中学校に通っている頃は良かったな、楽しかったな。それがガミラスなんて宇宙人が攻めてきて、東松原のおうちも無くなって、お姉ちゃんまで避難している途中にガミラスに襲われていなくなってしまったし。でも、お姉ちゃんのおかげで、ゆみもお父さんもお母さんも、それに愛犬のメロディも猫の美奈ちゃんもまりちゃんもギズちゃんも地下シェルターに無事避難することができた。

宇宙戦艦ヤマトがガミラスを倒してくれて、地球の放射能もきれいにしてくれたから、また地上で暮らせるようになった。地上に上がったら、また普通に東松原にお家が出来て、そこで暮らせるのかと思っていた。それなのに、地球政府に貧民とかいうわけのわからないものにされてしまって、全然良いことが何もない。

「なんか、もっと良い事が起きないかな」

ゆみの想像は続く。とりあえずこの貧民街からは脱け出したいな。そして東松原に行って、そこにお父さんとお母さんと暮らせるお家を建て直したい。お家にはお父さんの病院、デンタルクリニックもあって、メロディが走り回れるお庭もあって、お家では美奈ちゃんもまりちゃんもギズちゃんもいて、リビングのソファでゴロゴロしていて・・。あ、でも東松原にお家を建て直せても、そこにはもうお姉ちゃんがいないのか。

ゆみの想像は、いつもここで止まってしまう、その先に進めないのだった。

「お前さ、1人で、ここで何をやっているんだよ」

いきなり背後から声をかけられて、びっくりしてゆみは振り向いた。そこには竜が立っていた。

「なんで。なんであんたがここにいるのよ」

「お前がどこに行くのか気になってついて来た」

「何よ、あんたって、あたしのストーカー?」

「けっ、誰がお前みたいな可愛げのない女のストーカーなんかするかよ。いつも1人でどっか行ってしまうから、どこに行くのか気になっていただけだよ」

竜は、ゆみに答えた。

「ここなんだよ?」

「ただのゴミ置場の中にできた洞穴。ゴミの中に出来上がった空間よ」

ゆみは、竜に言った。

「で、この洞穴で、お前はいつもメソメソ、メソメソと1人泣いているのか」

「泣いていないでしょう」

ゆみは、自分の目を手で見開いて見せながら竜に言った。

「えーん、えーん、貧民にされてしまって悲しいよ。わーん、わーん」

竜は、泣き真似をしてみせた。

「バカじゃないの!」

ゆみは、竜の泣き真似を無視した。

「貧民街を崩壊する準備をしていたのよ。いいものを見せてあげるよ」

ゆみは、洞穴の先に置いてあるトタンの屋根を退けると、そこには地下に降りる階段があった。

「おいで」

そう言って、ゆみは先に階段を下った。竜は、その後について来た。10段ぐらい階段を降りると、階段は終わった。そこにはコンクリートの広い部屋、空間があった。

「ここは何だよ?」

ゆみの後について降りて来た竜が聞いた。

「この町の下水道施設よ」

ゆみは竜に答えた。

少年盗賊団再結成につづく

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