今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

さよなら、地球

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「それで、では、あの星は200年後の地球なんかではないということか」

艦長である古代守は、佐渡先生からの無線を聞いて、再度確認していた。

「っていうことは、暗黒星雲は地球人とは全く無関係の別の星の人ということか」

第二艦橋にいたヤマト乗組員たちも、佐渡先生からの無線を聞いて驚いていた。

「太助、ロダンの考える人の腕のポーズが逆というのは確かなのか?」

「はい。僕、ケータイであの星に着陸した際の景色を撮っていますから、その動画データをそちらにお送りします」

太助は、無線を通じて、自分のケータイの動画データを第二艦橋に送った。

「確かに、地球のロダンとはポーズが逆だな」

第二艦橋の皆も、ロダンの考える人のポーズが逆ということを、太助からの動画データで確認できた。さらに、太助の動画データに映っているほかの地球の芸術家たちの絵画も偽物であることが確認できた。

「どうやら、200年後の地球というのは確実に嘘のようだな」

「暗黒星雲は、地球人とは全く関係のない宇宙人か」

第二艦橋にいるヤマト乗組員たちも、200年後の地球が嘘であることは確認できた。

「進!そうなると、いま地球にいる暗黒星雲のやつらは、いつ地球にある爆弾を爆発させても構わないということになるぞ」

艦長こと古代守が、弟の進に進言した。

「ええ、兄さん。僕も今そのように思っていました」

「え、ってことは古代。俺たちは早く地球に戻って、やつらを倒さなければならないということか」

「そういうことになるな」

古代進は、島大介に言った。

「それにしても、なんで暗黒星雲のやつらは、200年後の地球とかって、そんな突拍子もない嘘をついたんだろう?」

島大介は、自分の頭に浮かんでいた疑問を皆に聞こえるように口にした。

「ね、太助くん。そこにまだ、ゆみもいるの?」

祥恵が、無線を通じて太助に聞いた。

「ええ、ここにいますよ。雪さんのお膝に座ってお話しています」

「そう。ゆみに代わってくれる」

「はい」

太助は、祥恵に言われて、医務室のベッドに腰掛けているゆみのことを呼んだ。

「お姉ちゃん」

「ゆみ。あんた、なんか理由を知らない?暗黒星雲の人たちが、私たちヤマトに200年後の地球とかって嘘をついた理由・・」

「だって、あの人たち、ヤマトがこわいんだもん」

「ヤマトがこわい?」

「うん。ヤマトの船首に付いている波動砲のこと。波動砲の発射する砲弾は、あの人たち頭だけの化け物たちの建造物にぶつかると、建造物の素材と共鳴して大爆発を起こしてしまうから」

「え、そうなの?」

祥恵は、ゆみに聞き返した。ゆみは、無線越しに姉に向かって頷いた。

「そうか!それで、あいつらは、俺たちヤマトに波動砲を撃たせないために、200年後の地球だといえば攻めてこないだろうと思ったのか」

島大介と古代進が、ゆみの言葉から気づいた。

「兄さん、どうしますか?やつらの嫌いな波動砲をお見舞いしてやりますか?」

「いや、無駄な殺生はいけない。波動砲で破壊しなければならない大義はないだろう」

「確かにそうですね」

古代進は、兄に言われて、安易に波動砲をお見舞いしてやろうかと考えついた自分のことを反省した。

「艦長、地球から通信です」

相原が、艦長の古代守に声をかけた。

「地球から通信?」

古代守は、一瞬200年後の地球からの通信かと思ったのだが、それは200年前いや現在の地球からの通信だった。

「ヤマトの皆さん、ぜひ暗黒星雲を倒してください」

地球に残って戦っている地球人の戦士たちがヤマトに呼びかけた。

「いま地球にある暗黒星雲の爆弾ですが、起動スイッチが二重になっていて、暗黒星雲にある起動スイッチを破壊してからでないと、こちらの爆弾を破壊できないのです」

これで、暗黒星雲に波動砲を撃ち込む大義が出来た。

「進、波動砲発射準備!」

艦長の古代守は、古代進に命令した。

「了解!」

そういうと、古代進は波動砲を目の前の暗黒星雲の星に向かって発射した。

「え!ちょっと待って!あの星にはサーシャが・・」

波動砲の発射に気づいて、森雪は慌てて第二艦橋の無線に呼びかけた。

「波動砲発射!」

古代進は、波動砲の発射スイッチを押した。ヤマトの先端にある波動砲が発射され、真っ正面にある200年後の地球とやらに命中した。

200年後の地球は、大爆発を起こし、粉々に飛び散った。それは、森雪のいるヤマト医務室の窓からも見えていた。

「遅かった・・」

森雪は、澪が自分の姪だとせっかくわかったのにお別れになってしまったことを悔やんでいた。ふと、森雪は、後ろにいるゆみの方を見た。

ゆみは、冷静な顔をして、医務室のベッドに腰掛けている。膝には、猫たちが寝転がってゴロゴロしていた。

「ゆみちゃん、サーシャ亡くなちゃったよ」

「え、亡くなってないでしょう。だって、周りの変な殻が取れただけだもの」

ゆみは、森雪に言われて普通に答えた。

「殻?」

森雪は、ゆみに言われて窓から爆発した200年後の地球の様子を見ていると、爆破で起きた真っ白な噴煙が少しずつ消えていき、その中から鉄骨のようなメカニックで構成された星?宇宙船のようなものが現れた。

「何、あれ?」

森雪は、噴煙の中から現れた星を見て叫んだ。

「あれが、本当の暗黒星雲の星の姿・・」

ゆみは、ベッドの上から森雪につぶやいた。

最後の戦いにつづく

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