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新たなる敵
「ゆみ、これとかどうかな・・」
お母さんは、東松原のスーパー2階の衣料品コーナーで、ゆみに言った。
「これ、ゆみちゃんに可愛いと思うんだけどな」
お母さんが、手に持っているのは白いフレアースカートだった。
ゆみは、
本編の「ゆみ日記」の中でも述べているが、ゆみは小さい頃からスカートが嫌いで、お姉ちゃんが例えスカートを着て出かける日でも、ゆみはぜったいにスカートを履いてお出かけすることはなかった。お母さんは、ゆみにはどうしてもスカートを履いてもらいたいらしくて、よく履かせようとはするのだったが。
「スカート・・」
ゆみは、お母さんの持っているスカートを見て、つぶやいた。
「うん。やっぱり嫌よね?ゆみちゃんは、小さい頃からスカート嫌いな子だったものね」
お母さんは、あきらめたようにスカートを売り場のハンガーに戻しながら言った。
その日は、1週間後に大学の、医大の入学式を控えた日だった。今日は、ゆみが大学に着ていく服を、お母さんと買いに来たのだった。
「着てみようかな?」
ゆみは、お母さんが戻したスカートを手に触れてみながら、言った。今までだったら、ぜったいにスカートは履かないゆみだったが、お姉ちゃんとも再会できて、貧民のレッテルも外してもらえて、幸せな日々を送れるようになって、なんとなく、たまには女の子っぽい服を着てみても良いかなと思うようになったのだった。
「え、着てみる?」
お母さんは、ゆみが自分からスカート着てみるなんていうの初めてだったので、ちょっと嬉しそうに聞き返した。
「試着してみようか?」
お母さんに聞かれ、ゆみが黙って頷くと、試着室に連れて行かれ、そのスカートを履かせてもらった。初めてのスカートは、スースーしたけど、ちょっとした空調の風に揺れて、自分の足に当たるスカートの生地が心地よい。
「スカート気持ちいいかも」
「そうでしょう、お母さんだって今、スカート履いているわよ」
ゆみがつぶやくと、お母さんは嬉しそうに、自分のデニムのスカートを揺らしてみせながら、にっこりしていた。
「それじゃ、これ買っていきましょうか?」
「うん」
ゆみは、頷いた。
「このまま帰りたいな」
ゆみが言うと、側にいた店員さんが笑顔でタグとかを取って、履いて帰れるようにしてくれた。ゆみは、お家に帰ると、家にいたお父さんの前をスカートで歩いてみせた。
「おや、どこの素敵なお嬢さんかと思ったぞ」
お父さんが、ゆみに言ってくれて、ゆみは嬉しくなった。
「あれ、ゆみ。スカート履いているの」
夕方、勤務先の省庁から帰ってきた祥恵も、ゆみがスカートを履いているのに気づき、驚いていた。次の日、家に遊びに来たあゆみちゃんも、スカートを履いているゆみのことを可愛いと褒めてくれた。
それから、少年盗賊団の女の子たちも、ゆみがスカートを履いているのを真似して、何人かは自分でもスカートを履くようになった。今まで少年盗賊団の子たちは、女の子もスカートなんて誰も履かなかったので、そこからも今の地球は幸せになったのだなということがわかった。
「ゆみ姉、似合わないよ。俺は、そんな女っぽいゆみ姉よりも、いつものような活発なゆみ姉の方が好きだな」
そう言ったのは、竜ただ1人だった。
戦艦の造船工場で整備担当業務に配属された太助は、よく勤務が終わると、わざわざ東松原に寄ってから、省庁の独身寮にある自分の部屋に帰っていた。
「ゆみちゃん、可愛いです!最高です」
帰り道でゆみと会ったときに太助は、スカートを履いているゆみのことを褒めていた。最も、太助の場合は、ゆみのことは何でもかんでも褒めてくるので、本当に可愛いのかどうかはわからなかった。
「ね、竜。起きてる?」
7階の施設の竜の部屋のドアを、早朝、まだ早い時間にノックしたのは、あゆみだった。
「え、どうした?こんな朝っぱらから」
太助は、パジャマ姿のまま、眠い目をこすりながら、部屋のドアを開けた。
「窓から外を見てみなよ。宇宙船が襲ってきたよ!」
あゆみは、竜の部屋に入るなり、竜に言った。
「宇宙船?」
あゆみに言われて、竜は自分の部屋の窓から外を覗いた。
まだ明け方、朝日がやや上がり始めたところで、ほんの少しだけ明るくなり始めたところだった。その明るさの中、奥に見える港の海上にうっすらと不気味な真っ黒な球形の宇宙船が着水していた。
「なに、あれ?」
真っ黒な球体の真横には、なんて書いてあるのかわからないが、宇宙語?古代エジプト文字のような象形文字で何か文字が掘られていた。
「宇宙船よ。あいつら、さっきまで向こうの丘の上に着陸していて、そこの町をなんか光線で破壊していた」
あゆみは、竜に言った。あゆみが言う向こうの丘の町は炎を上げて燃えていた。
「やばいじゃ、ないかよ」
再度、少年盗賊団につづく