今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

再度、少年盗賊団

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「おい、ゆみ、起きろよ!出撃だぞ!」

今日は、大学の入学式の日だった。

「ゆみちゃん、これ着ていきましょうね」

お母さんは、ゆみに紺色のブレザーとフレアースカートを履かせていた。足には紺のストッキングを履いて、いつもよりも女の子らしかった。お母さん自身も紺のブレザーとタイトスカートを履いている。ブレザーの下のブラウスには、お花のコサージュが付いていて、新入生の母親らしい姿だった。

「おい、ゆみ、起きろよ!出撃だぞ!」

ゆみが、お母さんの作った朝ごはんをお父さんと一緒に食べていると、玄関のドアを激しくノックする音がした。あの声は、竜だと、ゆみにはすぐピンときた。

「なによ。朝早くからうるさいわよ」

ゆみが玄関のドアを開けると、外から飛びこんできた竜に言った。

「祥恵さんは、どこにいる?」

竜は、ゆみの言葉などお構いなしに聞いてきた。

「お姉ちゃんは、今日は早番だから、もう出勤している」

ゆみは、竜に答えた。

「大変だぞ!これから少年盗賊団の出撃だぞ!戦うぞ!」

竜は、ゆみのことを上から下へと全身を見ながら言った。竜の後ろには、ほかの少年盗賊団の子たちも皆、一同に揃っていた。今日は訓練学校も入学式の朝だということで、スカートを履いていくと言っていたあゆみも、ジーンズでラフな格好で立っていた。

「あれ、あゆみちゃん。お母さんと一緒に買いに行ったあのスカートを履くんじゃなかったの?」

ゆみが、呑気にあゆみに質問した。

「何を言っているんだよ。お前こそ、そんなチャラチャラした服装で戦えると思っているのかよ。さっさと着替えて来いよ」

あゆみが答える前に、竜が返事した。

「はい?」

「ゆみちゃん、宇宙人だよ!宇宙人がまた攻めてきたのよ!」

あゆみが、玄関の一番近くに付いている窓の外を指さしながら言った。ゆみは、あゆみに言われて、窓の外を眺める。港に大きな球体の宇宙船が着水していて、その球体の上部にあるハッチが開いて、そこから八本足のタコのような乗り物が次々と出てきて、地上に上陸していた。

「なに、あれ?」

「だから、宇宙人だって!俺らで倒しに行くぞ」

竜が、再度ゆみに言った。

ゆみは、玄関先に出てきたお父さんとお母さんの方を見た。お母さんも窓の外にいる宇宙人の姿は確認済みだったが、あなたが戦いに行く必要などないわよという顔で、ゆみのことを見ていた。

「なんで・・。あのさ、地球防衛軍とかは?ヤマトとか出撃してないの?」

ゆみは、竜に聞いた。

「さっきまで、向こうの丘の上で地球防衛軍は、あいつらと戦っていたよ」

竜は、窓から見える丘の向こうを指さした。そこの町は火事で燃え広がっていて、その中に、おそらく宇宙人たちに襲われてしまった後なのだろう、地球防衛軍の戦車とかが残骸になって捨てられていた。

「やられちゃったの?」

「ああ」

竜は、ゆみに答えた。

「あいつら、下手くそなんだよ。ただ無鉄砲に図体のデカい戦車で向かっていくだけなんだもん。俺らなら、もっと機動力のあるバイクで上手に戦えるだろう?」

竜は、ゆみに言った。

「あたしたち素人だし、もっと負けるかもよ」

ゆみは、竜に言った。

「なんだよ、逃げるのかよ。ゆみは」

「逃げるって。そりゃ、竜たちは訓練学校見習いの宇宙戦士かもしれないけど、あたしは、ただの医大生、一般市民だもん」

ゆみは、竜に応えた。

「はああ、よーくわかったよ。ゆみは意気地無しの弱虫に成り下がちゃったんだな。一生、そのチャラチャラしたスカートでお嬢様していろよ!」

竜は、ゆみに怒鳴った。そして、

「おい、お前ら。行くぞ!俺らだけで、あそこの住民たちを宇宙人から守るぞ!」

竜は、ゆみのことはほったらかして、ほかの少年盗賊団の子たちを誘って、出て行こうとしていた。

「竜!ちょっと待ちなさいよ!あんただって宇宙戦士といっても、まだ見習いでしょう。あんたが行って、あの宇宙人たちに勝てると思っているわけ?」

ゆみは、出て行こうとしている竜に後ろから声をかけた。

「ね、お姉ちゃんに伝えて、ヤマトの皆に戦ってもらった方が良いよ」

ゆみは、竜に言った。

「ほお、じゃあ、お前はヤマトの皆さんがいらしゃるまで何もせずにいる気かよ。弱虫のお嬢様だな。いつからそんな腑抜けになってしまったんだよ。ヤマトの皆さんが来るまで待っていたら、あそこに住んでいる人たちは全員やられて死んでしまうぞ!」

竜は、ゆみに言い返した。

ゆみが、窓の外の方を見ると、さっき球体から飛び出してきたタコ型乗り物は、地上に上陸していて、港近辺にある建物を次々とぶっ壊し始めていた。

ゆみは、タコたちが町を破壊する様子を窓からじっと見ていた。

「おい、腑抜けはほっておいて行くぞ!」

竜が、ほかの子たちを誘って、玄関から出て行こうとしていた。

「ちょっと、待ちなさいよ!誰が行かないって言った?先にバイク置き場に行って、そこで待機してなさい!あたしも、すぐ、5分、いや3分で着替えて降りていくから」

ゆみは、竜に叫んだ。

「そう来なくちゃ!」

竜は、ゆみの決断を褒めて、ほかの子たちを引き連れ、先にバイク置き場へ降りていく。お母さんが、ゆみの決断を心配そうに、おろおろと見つめていた。

「お母さん、ごめんね。あたし行かなくちゃ。でないと、あそこに住んでいる人たち皆、やられちゃう」

ゆみは、お母さんにそう言うと自分の部屋に入って、スカートを脱いでジーンズなど動きやすい服装に着替えて、出てきた。

「お母さん、行ってきます!」

「ゆみちゃん・・」

出かけようとしているゆみのことを、お母さんはまだ心配そうに見ていた。

「大丈夫よ。ちょっくら行って宇宙人のやつら倒してくるだけだから。それに、この騒ぎでしょう、大学の入学式だって休止よ。きっと延期になるって」

そう言うと、ゆみは、お母さんにバイバイして、出かけていった。

タコとの戦いにつづく

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