今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

レーダー班

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「はあ、お父さんから話は聞いていたけど、なんかワープって変な気分」

サーシャは、ワープ明けに椅子から立ち上がりながら言った。

「慣れると、普通に出来るようになるわよ」

スターシャは、サーシャに言った。

「ワープに慣れるよりも、地球で暮らしたいな」

サーシャは、つぶやいた。

「サーシャが、そんなに地球で暮らしたかったなんて知らなかったわ。今度、この戦いが終わったら、お父さんに相談してみましょうね」

スターシャは、自分の娘の頭を撫でながら答えた。

「ちょっと、お父さんのところに行ってくる」

サーシャは、部屋を飛び出していった。サーシャにとっては、初めてのワープだったし、ワープ明けにお父さんが大丈夫なのか確認しないと心配なのであった。

「お父さん、ワープ大丈夫だった?」

サーシャは、第二艦橋の艦長席に座っている古代守の側まで行くと、ほかの乗組員に聞こえないよう小さな声で聞いた。

「ああ、お父さんはワープは慣れているからね。お前は大丈夫だったか?」

「うん。少し変な気分だったけど」

サーシャは、お父さんに小さく頷いた。

「そうだ、澪くん。君も、ブラブラしてないで、なんか仕事を手伝いなさい」

急に、古代守の声が小声から普通の声の大きさになって、サーシャに話しかけた。

「澪。ここに来て、レーダーの監視をしてくれないか」

聞こえてきた古代守の声に反応する形で、第二艦橋の奥でコンピューターの監視をしていた真田が、サーシャに声をかけた。

「はーい」

サーシャ、いや澪は、真田のところに移動した。

「わかるか?ここを監視して、何か障害物があったら報告するんだ」

真田は、レーダーの使い方を澪に教えて、澪はレーダーの監視をはじめた。初めて触るレーダーの機械だったが、慣れてくると意外に操作は簡単だった。あと自分の中に半分、お母さんの、イスカンダル人の血が流れているせいか、第六感のようなものに優れていて、レーダーに映し出される宇宙の岩石とか星屑のような障害物を、画面に表示される前に察知できるようになってきていた。

「なかなかセンスあるじゃないか」

叔父?である真田に褒められて、なんだか澪は嬉しかった。

それから、この航海中はずっとレーダー班は、澪の仕事になってしまっていた。サーシャも、母から引き継いだ第六感のようなものを活かせる仕事で、このレーダー担当の仕事が嫌いではなかった。でも、やっぱり自分がやりたい仕事は、これではないなと感じていた。

「この戦いが終わって、ヤマトが地球に戻ったら、ぜったいにお父さんに地球で暮らしたいってことを相談しよう」

サーシャは、そう思っていた。お父さん、地球で暮らしたいって話したら、なんて言うだろうか?地球のテレビのドラマでよく出てくるお父さんのように娘を手放したくないとかって反対するだろうか?ううん、うちのお父さんは、そういう感じのお父さんではないな、きっと喜んで地球に送り出してくれそうな気がする。

 

「ゆみ!食事いくぞ!」

竜たちが、ゆみの部屋に向かいに来た。

「うん」

ゆみは、竜たち皆とヤマトの食堂に移動した。祥恵は、戦闘班長の仕事が忙しいのか、ちっとも部屋には帰ってこない。一緒の部屋だというのに、ずっと会えていない。

「今日は、何を食べる?」

「俺、ハンバーグ定食!」

「竜は、いつもハンバーグ定食じゃん。あたしは、親子丼にしようかな」

あゆみが言った。皆は、食堂のおばさんのゆみのお母さんに食事を注文した。ゆみだけは、自分で注文しなくても、お母さんが勝手に選んで、食事を出してくれる。

前は、ゆみも食べたい食事を注文していたのだが、頼んだものがちゃんと出てくることは少なかった。必ず、デザートの甘いものが減らされて、代わりに野菜が多めに付いていたりしていた。

「ごはん食べ終わったら、何をする?」

「きょうは、後で展望室に行ってみない?」

「展望室?それより下のフロアの屋内グランドに行って、そこでサッカーしないか」

「サッカーいいね」

結局、男の子たちは、屋内グランドに行ってサッカーをすることになった。ゆみたち女の子たちは、展望室に行って、そこで星を眺めたり、おしゃべりして過ごした。

これからヤマトは、暗黒星雲の宇宙人たちと戦いに行くというのに、子どもたちだけは楽しそうにヤマトの中ではしゃいでいた。

昔だったら、地下シェルターで食料を集めにお店を周ったり、貧民街で貧民たち皆の食料品を集めに走り回ったりしていたが、今は子どもたち本来の姿に戻って楽しめている感じだった。

暗黒星雲突入につづく

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