今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

東松原の家

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「あの、お嬢さんの腕・・」

お母さんは、電車の中で知らないおばさんに、ゆみの左腕を指さしながら、声をかけられた。

「お嬢さんの腕、そのマークはお役所に言えば、全部きれいに消してもらえますよ」

その知らないおばさんは、親切にもお母さんに教えてくれた。

「ありがとうございます」

お母さんは、その知らないおばさんに挨拶をして別れた。

それから皆は、電車に乗って3駅先の施設に行くと、今夜はそこで一泊した。次の日、お父さんは役所に行き、いろいろと今後の手続きを申請しに行った。

ゆみとお母さんは、祥恵に連れられて病院に行き、そこで左腕とお尻に付けられた貧民のマークをきれいに消去してもらった。2人が消去してもらっていると、役所の申請を済ませたお父さんも、後からやって来て合流し、お父さんも貧民のマークを消してもらった。

「ねえ、お母さん」

祥恵は、病院の待合室でお母さんに言った。

「前に、ゆみがさ、私とも再会できたし、今後はヤマトには乗らないって約束してたでしょう。私は、ヤマトの戦闘班長になってしまっているし、ヤマトを降りるってわけにはいかないんだけど・・」

祥恵は、お母さんに言った。

「それはそうよね。祥恵は、せっかく良い仲間と職場があるんだからヤマトを続けなさい」

「うん。その・・宇宙で何かあったときには、私もヤマトに乗って出撃はしなきゃならないけど。普段はね、長官にお願いして、省庁の方でデスクワークに従事させてもらえることになったの」

「あら、そんなこと出来るの?」

「うん。古代くんとか、島さんっているでしょう。彼らもね、ヤマトの出撃が無いときは、いつも護衛艦とか貿易船の艦長をやっているのよ。雪さんは、長官付きの秘書だし。だから私も、ヤマトが出ないときは他の部署で働けるの」

「そうなの」

「うん。省庁のデスクワークなら、自宅から通えるし、ゆみや家族と一緒に過ごせるから。これからは、なるだけ家族と過ごしたいから」

「それは、お母さんも安心だし、ゆみも喜ぶと思うわ」

お母さんは、祥恵に返事した。

「今後の方針だが、今井家は、元住んでいた東松原に戻ろうと思う」

お父さんは、ゆみたち家族に報告した。

「また、お家に戻れるの?」

「ああ。前に住んでいた自宅は、もう他の人の家が建ってしまっていて住めないが、その近くに良い空き地があってな。そこにマンションを建てようと思う」

「マンション?」

「ああ・・」

お父さんは、家族皆にそう伝えた。

そして、お父さんは国からもらった賠償金などで、東松原に7階建てのマンションを建てた。東松原駅から徒歩7、8分ぐらいの商店街の端にあるマンションだ。1階は全てテナントになっていて、肉屋さんとか薬屋さんとか店舗が入居してくれた。そのテナントの1つに、お父さんが経営する「今井デンタルクリニック」も再建した。

今井デンタルクリニックのちょうど上にある2階の居室が、今井家の自宅となった。2LDKの部屋で、お父さん、お母さんに祥恵、ゆみ、それに愛犬のメロディ、猫の美奈ちゃん、まりちゃん、ギズちゃんたちも一緒に暮らせる部屋になった。

このマンションの最上階、7階には、全フロアとも親のいない子が暮らせる施設が作られた。そこに、竜たち少年盗賊団の子どもたちが暮らすこととなった。寮母さん、保母さんも常駐していて、食事などの面倒もみてもらえる施設になった。

竜やあゆみたち年長組は、将来ヤマトの戦士になりたいということで、ゆみが卒業した宇宙戦士訓練学校に通うことになった。ほかのまだ小さい子どもたちは、施設から小学校、中学校に通うことになった。

ゆみは、というと訓練学校の卒業資格をもとに医大の獣医学部に入学し、そこで獣医になるための勉強をすることとなった。

「ゆみは、もうヤマトでは十分に活躍したんだから、これからはヤマトには一切乗らず、ヤマトのことは忘れて獣医になるために勉強しなさい」

ゆみは、お姉ちゃんと約束させられた。ゆみも、今後は特にヤマトには乗りたいとも思わなかった。

そして、4月からは、少年盗賊団の子たちは近所の公立小学校、中学校に通い始める。竜やあゆみたちは、宇宙戦士訓練学校に通うのだ。ゆみだって、医大に入学し通うことになる。祥恵は、毎日、通勤電車に乗って省庁勤務だ。お父さんは1階の病院で歯医者さんだ。お母さんも、お父さんの病院で歯医者さんとして勤務する。

ガミラスが地球に遊星爆弾を落としてきて以来、ようやく幸せが戻ってきた。これから、ゆみたちは皆、また幸せな生活を送れるのだ。誰もが、そう思っていた。

そんな幸せな地球のことを、宇宙の果ての暗黒星雲の中から不気味に見つめている視線があった。

新たなる敵につづく

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