今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

森雪先輩

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「なんなのよ!」

ゆみは、森雪に引っ張られながら叫んでいた。

「いいかげん、うるさいわよ!」

森雪は、ゆみに言った。

森雪は、ゆみを連れて、ヤマトの廊下を進んでいく。廊下の両サイドには、それぞれヤマト乗組員たちの船室があった。その船室の一つの扉の前に到着すると、森雪はその扉を開けた。

「さあ、着いたわよ」

森雪は、ゆみのことを部屋の中に入れた。船の船室なので、中は結構狭い。部屋の端に2段ベッドが置かれていて、上下に1人ずつ寝られるようになっていた。ベッドの反対側には、デスクとチェアが置かれ、デスクの上にはノートパソコンが置かれていた。デスクの向こうにはタンスが2個とクローゼットが1個置かれていた。入り口の扉の向かい側にも扉があって、奥にはバスタブとトイレがある小さなバスルームになっていた。

「今日から、ここがあなたと私のお部屋。ヤマトに乗っている間は、ここで暮らすことになるからね」

森雪は、ゆみに説明した。

「私たちはさ、佐渡先生にあなたが無事テストセーリングを過ごせるように頼まれたのよ。ほら、だから古代君も、あなたのことをヤマトから追い出すような振りしていたでしょう。あれは、わざとあなたを卒業生たちから遠ざけて、私のそばで生活班として暮らせるようにって配慮なのよ」

森雪は、ゆみの顔を覗きこみながら言った。

「卒業生たちの中で、コスモタイガーの研修とかに参加するよりも、私と一緒に、生活班で過ごしている方が安全でしょう。それに貧民のことバレる心配も少なくなるでしょう」

「余計なことを。あたしは、別にコスモタイガー研修しながらでも、ちゃんとやれるから!問題なくこなせるから!余計な世話しないで」

ゆみは、まだ森雪のことを警戒しながら言った。

「どっちにしろ、あたしにはヤマトに乗ったらやらなければならない目的があるんだから」

「目的?目的ってなに?」

森雪は、ゆみに聞いたが、ゆみは口を閉じて黙ったままだった。

「まあ、いいわ。私さ、これからヤマトは出航するから、いろいろと出航の手伝いしてこなくちゃならないのよ。ゆみちゃん、しばらくここで静かにしていてくれるかな」

森雪は、ゆみに告げると部屋を出て、扉を閉めると外から鍵をかけて出かけていった。

森雪が出て行くと、ゆみもすぐに扉に行き、開けようとした。が、鍵がかかっているので扉は開かなかった。

ゆみは、部屋の中をぐるりと見回すと、奥のバスルームに移動した。バスルームの天井を見上げると、そこに換気口があった。ゆみはトイレの上に乗っかって、天井の換気口のフタを開けた。フタをシンクの中に置くと、換気口の淵に両手をかけて中をのぞきこむ。

天井裏は、とても狭かった。

ゆみは、狭い換気口に這い上がって天井裏に上がった。体の小さいゆみでも、天井裏はさすがに立って歩くことはできず、ハイハイしながら前に進むしかなかった。

ゆみは、ハイハイしながら天井裏を進んでいく。

天井裏の先の方にも、別の換気口があり、そこにフロアからの明かりが漏れていた。方向的にいって、そこは森雪の船室の前の廊下あたりだろう。ゆみは、そこまでハイハイして行き、上から下を見下ろす。思った通り、そこは船室の前の廊下だった。ここから船室の外に出れそうだ。

ゆみは、換気口のフタを外す。

外したフタを脇に置くと、換気口の淵をしっかり両手で掴みながら、足から換気口の中に降りる。体も換気口の中に入れ、ゆみは天井の換気口の淵を両手で掴んだまま、天井からぶら下がっている状態になった。このまま、手を離して、飛び降りれば、廊下の床に着地できそうだ。

ゆみは、床に飛び降りた。

と、空中に浮かんだゆみの体は、そのまま無事に廊下の床に着地・・する前に、森雪に両手で抱えられていた。ゆみの体は、廊下にいた森雪に抱っこされていた。

「えっ」

「まったく、ゆみちゃんはお転婆なんだから」

森雪は、そう言うと、そのまま、ゆみのことを抱っこして部屋に戻った。部屋に戻ると、ゆみのことをベッドに腰掛けさせてから、扉が開きっぱなしのバスルームの中に入った。天井を見上げると、換気口のフタが開いている。

「よく、こんなところから脱出したわね」

森雪は、そう言うと、ゆみが外した換気口のフタを元に戻してから、ガムテープとロープでしっかりフタが外れないように固定してしまった。

「もう、これで脱出できないからね」

森雪は、ベッドに腰掛けているゆみに言った。

「ああ、遅刻だわ。お姉さん、ちょっとヤマトの出航手伝ってくるから、ゆみちゃんはお願いだから、ここで静かにしていて」

そう言うと、森雪は部屋を出て、扉の鍵をかけた。

ゆみは、ベッドからバスルームの中を覗き込むと、換気口がしっかり閉じられているのを目にした。他には、もう部屋に換気口は無さそうだ。脱走は、諦めるしかなさそうだった。

「ゆみちゃん、静かにしている?」

部屋の扉が開いて、そこから森雪が顔を出して、ゆみに聞いた。ゆみは頷いた。

「ちゃんとここの部屋で静かにしていてね」

森雪は、再度ゆみに聞いた。

「はい。静かにしていますから、遅刻しますよ」

脱走を諦めたゆみは、森雪に答えた。

「そう、それは良い子ね。静かにしていたら、食堂に寄って、美味しいものもらってきてあげるからね」

森雪は、部屋を出て行ってしまった。

ヤマト出航!につづく

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