今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

太助のお手柄

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「古代さん、私もうしばらく、ここの星に残って、この星のことを調べたいんだけど」

祥恵は、古代進に言った。

「え、調べるって?」

古代進は、祥恵に聞き直した。

「ゆみの言ったことが気になちゃって・・」

祥恵は、ヤマトを出てくる前に、ゆみが言っていた「地球総司令官が言っていたことは嘘つきだ」という言葉が気になっていたのだった。

「もちろん、あの時言っていたゆみの言葉なんて、ただの子どもの・・ゆみが私の側から離れたくないだけのなんか言い訳だけな気もしないではないんだけど」

祥恵は、古代進に説明した。

「なんか親ばか・・違うか。姉ばかというか、妹の言うこともちょっと気になっちゃって。この200年後の地球というこの星をもう少し私なりに独自に調査してみたいなというか・・」

「いいよ。大統領専用機の中に入っている小型脱出機を置いていくから、祥恵くんは、1人ここに残って、もう少し調査してみてくれよ」

祥恵の提案は、古代進に受け入れられた。

「それじゃ、私はもう少しこの星を調査させてください。ヤマト乗組員がこの星で暮らすときのためにも色々情報を集めておきたいので」

祥恵は、お見送りに出てきてくれた200年後の地球の女性に声をかけた。

「私も、祥恵さんとここに残って、調査のお手伝いします」

サーシャが祥恵に言った。

「いいわよ。残るのは私1人だけで」

「ううん、私も祥恵さんと一緒に残ります。私には、ゆみちゃんとの約束で祥恵さんをヤマトに連れ帰らなければいけない義務がありますから」

サーシャは、祥恵に言った。

「祥ちゃん、澪のことも一緒に連れていった方が調査も何かと便利だろう」

真田からも、澪を同行するように言われたので、祥恵は調査にサーシャも一緒に連れて行くことにした。

祥恵は、サーシャと一緒に、大統領専用機から脱出用の2人乗りの機体を表に取り出して、200年後の地球の大地の上に停車させた。調査が終わったら、2人はこの機体に乗ってヤマトへと戻るつもりだった。

「じゃ、よろしく頼む」

祥恵とサーシャ以外のヤマト乗組員たちは、大統領専用機に乗りこむと、祥恵たちに手を振った。祥恵は、大統領専用機の扉を閉めながら、祥恵も機内の皆に手を振った。

「ね、調査は私1人で十分だから。祥恵さんも、ゆみちゃんのところに戻ってあげて」

突然、サーシャは、大統領専用機の扉を閉めていた祥恵の身体を、扉が閉まる少し前に機内に押し込んで、そのまま扉を閉めてしまった。

「ちょっと何をやっているの!?」

機内に押し込まれてしまった祥恵は、振り返った閉められた扉をどんどん叩いて、機外のサーシャに文句を言ったが、サーシャは、表から祥恵に対してバイバイの手を振っていた。

大統領専用機は、そのまま出発してしまい、上空に飛び立っていた。

「あいつ、初めからこうするつもりだったんだな」

サーシャの行動を見た真田が言った。

「え?どういうこと」

祥恵は、真田に聞いた。

「自分だけが調査には残って、お前さんのことを妹さんのところに戻そうと考えていたのだろう」

「なんでだろう?」

「もしかしたら、澪は、ここで地上に残ったら二度とヤマトのところには戻れないということを何か第六感のようなもので感じていたのかもしれない」

「だから、自分だけ残って、私のことをこうして機内に乗せてしまったと?」

「ああ」

真田は、黙って祥恵に頷いた。

「真田さんはそれで良いんですか?姪御さんを残したままで」

「今は、彼女の好きにさせてやろう。チャンスがあったら、また迎えに戻ってくるさ」

真田が言った。

そして、大統領専用機は、澪以外の乗員を乗せて、宇宙戦艦ヤマトに戻ってきた。

「ゆみちゃん、これお土産です」

太助は、食堂で会ったゆみに声をかけた。

「200年後の地球のお料理だそうですよ。めちゃ美味しいですから、ゆみちゃんも食べてみてください」

「あんたも、あの宇宙人が200年後の地球人とか信じているの?」

「ええ。違うんですか?」

太助は、ゆみに聞いた。

「まあ、訓練学校時代も、あんたはあんまり頭の良いほうじゃなかったもんね」

ゆみは、太助がテーブルの上に並べた食事を見ながら、つぶやいた。

「美味そう!いただきます!」

竜やあゆみたち子どもたちが皆、テーブルの周りに集まってきて、太助の持ってきた200年後の地球の料理を食べていた。

ゆみは、特には200年後の料理には興味無さそうに、皆が食べている姿だけ眺めていた。

「ゆみちゃん。ゆみちゃんも食べてくださいよ。僕は、ゆみちゃんのためにわざわざ持ってきたのですから」

太助が、ゆみに言った。太助は、もらってきた食事は、全部テーブルの上に出してしまって、手の中には200年後からもらったベネチアングラスしか残っていなかった。

「ね、そのグラスは?」

「あ、これですか。きれいなグラスでしょう。あんまりにも綺麗なグラスだから、一つもらってきちゃったんです」

太助は、ゆみにベネチアングラスを差し出して見せながら言った。

「これ、あたしにちょうだい!」

ゆみは、太助からベネチアングラスを受け取りながら言った。

「え?もちろんです。ゆみちゃんが欲しいなら喜んで差し上げますよ」

太助は、自分が持ってきたグラスをゆみが興味持ってくれたことを嬉しそうに言った。

「ありがとう・・」

ゆみは、太助に素っ気なくお礼を言うと、そのグラスを大切にハンカチに包んで、食堂を出ると森雪の元に走っていってしまった。

「どこに行ってしまったんだ?」

太助は、グラスを抱えて走り去るゆみの後ろ姿を眺めながらつぶやいた。

「さあ?なんせ、何か思いつくと猪突猛進で飛び出してしまう女だから」

竜は、太助の持ってきた料理を口いっぱいに頬張りながら、太助に伝えた。

まっかな嘘につづく

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