今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

大きくなったサーシャ

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「あっ」

ゆみがヤマトの艦内を歩いていると、向こうの廊下を歩いている真田澪の姿が見えた。

真田澪は、ゆみには気づかずに、そのまま廊下を通り抜けて、ヤマトの展望室に入っていった。ゆみも、真田澪の後を追って、展望室の入り口から中をそっと覗いた。

展望室には、誰もいなくて、真田澪だけが1人展望台の大きな窓から宇宙を眺めていた。その目は、なんだか感慨深げな様子で宇宙を見ている。

「サーシャさん」

ゆみは、真田澪の背後から、そっと近づいて声をかけた。

「え、お母さん?」

真田澪は、声を掛けられて驚いたように後ろを振り返った。自分のことをヤマトでサーシャと呼ぶのは、お父さんとお母さんだけのはずだった。

「だれ?」

サーシャは、少し不審そうに、ゆみのことを見た。

「あたし?あたし、ゆみ」

ゆみは、サーシャに答えた。

「ゆみ?」

「うん。サーシャさんでしょう?なんで真田澪なんて名前なの?スターシャさんの子どものサーシャさんだよね」

ゆみは、サーシャに質問した。

「なんで、あんたは、私がサーシャって名前だって知っているの?それに、私のお母さんがスターシャだって、なぜ知っているの?」

「それは知っているよ!だって、あたし、スターシャさんと仲良いんだよ。サーシャちゃんが、まだうーんと小さかった去年、あたし、サーシャちゃんのこといっぱい抱っこして遊んであげたんだよ」

「えっ!?」

真田澪は、ポカンとした表情で、ゆみのことを見ていたが、

「もしかして、あんたってさ。無鉄砲バカな女の子?」

真田澪は、ゆみに聞いた。

「無鉄砲バカ?」

「うん。お父さんに聞いたよ。あんたって、小さな戦闘機で、お母さんの生まれ故郷の大きな星が1個爆発する中に、お母さんのことを助けようと爆発に突っ込んだって」

「それで、無鉄砲バカ?」

「うん」

「え、ひどい!古代守さん、あたしのこと、普段はそんな風に呼んでんだ」

ゆみは、ちょっと古代守に怒っていた。

「ああ、違うよ。無鉄砲バカは、私が呼んだだけ」

真田澪、サーシャは、ゆみに答えた。

「星の大爆発の中に、小さな戦闘機で飛びこむなんて無鉄砲バカじゃない。だから、私がお父さんに、その人って無鉄砲なバカだねって言ったの。そしたら、お父さんったら、その子のことを笑って、確かに無鉄砲バカかもしれないけど、それだけ必死になって、おまえの母さんのことを助けてくれたんだぞって言ってた」

「へえ」

「そのときは、お母さんのことを助けてくれてどうもありがとう」

サーシャは、ゆみにお礼を言った。

「サーシャ、また貴女は展望室にいたの?」

展望室に入ってきたのは、スターシャだった。

「あら、ゆみちゃん。うちのサーシャと一緒だったの?」

「はい」

ゆみは、スターシャに答えた。

「ね、お母さん。この子ったら知ってる?せっかくヤマトの人たちの前では、真田澪って呼んでるのに、私のことすぐにサーシャだってわかったみたいよ」

「それはそうよ。ゆみちゃんには、小さい頃、地球に来たばかりの時に、貴女はいつもお姉ちゃんって遊んでもらっていたのよ」

スターシャは、サーシャに答えた。

「お母さん、いいの?私がサーシャだって言っても?」

「ゆみちゃんは特別よ」

スターシャは、サーシャとゆみの頭を撫でながら答えた。

「スターシャさん、どうしてサーシャちゃんって澪って名前なの?」

「それはね、ほら、半分、私のイスカンダル人の血が入っているサーシャは、成長が早いのよ。たった1年で大人になちゃっているでしょう。そんなの地球人に言ったら、地球人の皆さんは驚いちゃうじゃない。だから、真田さんの提案で、真田澪って名前で、真田さんの姪ということにしましょうってなったのよ」

スターシャは、ゆみに説明した。

「ね、ゆみちゃん、晩ごはんはもう食べた?」

「ううん」

「それじゃ、今夜は、うちの部屋で一緒にごはんにしない?」

「はい」

ゆみは、スターシャとサーシャと一緒に展望室を出て、廊下を歩いていた。ゆみは、スターシャについていくと、スターシャは、ヤマトの第一艦橋に入った。

「え、ここがスターシャさんの部屋なの?」

ゆみは、第一艦橋の中に入って、周りを見渡しながら、スターシャに聞いた。

「ええ。だって私の夫はヤマトの艦長だもの」

スターシャは、ゆみに答えた。

「あ、そうか!だから、スターシャさんのお部屋は艦長室なんだ」

第一艦橋の奥にはミニキッチンがあって、そこでスターシャは夕食の支度をし始めた。ミニキッチンの手前にはダイニングがあり、その前にリビングルームがあった。

サーシャは、リビングのソファに座ると、地球のテレビを付けて見始めた。

「ね、ゆみちゃん。良かったら地球語を教えてくれない?」

「いいよ」

「私、いつも地球のテレビを見ながら、地球語を覚えているの」

サーシャは、テレビを見ながら言った。

部屋の中央には艦長席があって、その艦長席の奥に仕切りがあって、スターシャさんたち夫婦のベッド、寝室と、その奥にサーシャさんのベッドがある部屋があった。

艦長の家につづく

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