今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

ふたたび家族探し

もっと詳細を確認する

「ああ、久しぶりに、この分厚い帳簿を見続けていると、目が痛くなるな」

祥恵は、省庁の書庫で住民台帳を調べている手を休めてつぶやいた。

「ずいぶん、長いこと中断しちゃったな」

祥恵は、思っていた。

ヤマトに乗って、イスカンダルまで行って、帰ってきて、地上の放射能を除去し終わって、やっとヤマトから解放されて、役所に行き、住民台帳を閲覧させてもらって、自分の家族を探していた。

その甲斐あって、新宿の地下シェルターのD地区というエリアに、うちの家族は避難していたらしいということまでは、わかったのだった。

そこで、ヤマトが、地球に近づいてくる白色彗星とテレザート星に幽閉されているテレサの情報をキャッチしたことで、祥恵の家族探しも一時中断になった。

宇宙戦艦ヤマトは、テレザート星のテレサを助けに行き、白色彗星のことも調べに、再び宇宙へと旅立つというのだ。当然、宇宙戦艦ヤマトの戦闘班長である祥恵も、お呼びが掛かって、一緒に宇宙へと旅立たなくてはならなくなってしまったのだ。

祥恵は、今回の旅はそんなに時間はかからないだろうと思っていた。

最初の旅のイスカンダル星に比べたら、テレザート星は遥かに地球の近くだった。そこへ行き、テレサのことを救い出したら、白色彗星のことをテレサから聞き出し、白色彗星の軌道をほんの少しだけ、地球への軌道からずらしたら、すぐに戻って来れるものだとばかり思っていたのだった。

しかし、それが思った以上に時間が掛かってしまった。テレザート星に行ってみたら、テレサを幽閉していたのは白色彗星に住んでいる人間で、さらには、その白色彗星がデスラー総統率いるガミラスの艦隊を保護していて、またもやガミラスとも戦わなければならなくなって、最終的には、白色彗星と一騎討ちをしなければならなかったのだ。しかも、白色彗星の姿のままの時と、巨大帝国の姿の時に、さらにさらに巨大戦艦の姿の時と、計3回も戦わされたのだ。

やっと、全ての戦いが終わって、ヤマトが地球に帰ってきた時には、さすがの運動神経抜群の祥恵もヘトヘトだった。

それでも、早く家族に会いたいと思っていた祥恵は、ヤマトから解放されてすぐに、省庁の住民台帳が保管されている書庫に行って、そこに泊まり込みで家族の居場所を探していたのだった。

「そろそろ5時です。本日の業務は終わりです」

夕方5時が近づくと、役所の表では、職員が役所に来た人たちのことを終了時間だからと帰宅をすすめていた。

「どうですか?祥恵さん。見つかりましたか」

職員の1人が、祥恵のところにやって来ると話しかけた。

「いいえ、見つかりません。なんでなんだろう、理由がさっぱりわからないのですが、D地区のエリアにいた人たちの情報だけがすっぽりと抜け落ちてしまっているんですよね」

祥恵は、職員の人に答えた。

「そうよね。確かにD地区のエリアだけ見つからないですよね。後で、私の方の仕事がひと段落したら、一緒に探すの手伝いますね」

職員は、祥恵に言うと、自分の仕事に戻って行ってしまった。

一般の役所に来訪してくる人たちは、朝の9時から夕方5時までで、それを過ぎると閉庁時間ということで追い帰されてしまう。だが、祥恵は、宇宙戦艦ヤマトの乗組員だということで、ここの書庫に泊まり込みで帳簿を探すことを特別に許してもらえていた。

この時に初めて、祥恵は、自分がヤマトの乗組員で良かったと思ったくらいだ。

「祥ちゃん、どう?元気?見つかった?」

書庫で探している祥恵に、こんど声をかけてきたのは森雪だった。

「あ、雪さん。ダメです。なぜだか、うちのお父さんたちのいたはずのD地区の情報だけすっぽり抜け落ちてて、どこか他の場所に紛れ込んじゃっているのではないかなって」

「そうなんだ。私も手伝うよ」

森雪は、時間を作っては、時々祥恵のいる書庫にやって来て、一緒に帳簿を探してくれていた。

「それにしても本当にD地区の人だけいないよね」

「ですよね」

「これはね、きっと。祥ちゃんのお父さんたち重要人物なのよ。それで、きっと地球政府はD地区の人間だけ特別な書庫に移して、厳重に鍵をかけて管理されているのよ」

森雪は、少しシリアスな顔をして見せながら、祥恵に言った。

「マジですか?」

「うん。そうよ。祥ちゃんのお父さんって重要人物だったでしょう?」

「え、そうだったんですか」

「思い当たらない?」

「うーん、どうかな。いいえ、ただの東松原の商店街外れにある町医者です」

「そうか。それじゃ、重要人物であるはずがないよね」

森雪が笑って言うと、祥恵も思わず笑ってしまった。

「そうそう、その笑顔。祥ちゃんは笑っている方が全然かわいいよ」

森雪は、祥恵に言った。

波乱万丈な学園生活につづく

読進社書店 新刊コーナー

Copyright © 2016-2024 今井ゆみ X IMAIYUMI All Rights Reserved.

Produced and Designed by 今井ゆみ | 利用規約 | プライバシーポリシー.