今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

英雄の丘

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「ゆみさん、卒業試験は最高でしたね!ズルまでして勝とうとしたのに、勝てなかった坂本の顔、愉快でしたよ」

太助は、ゆみを自分のバイクの後ろに乗せて、バイクを走らせながら嬉しそうだった。

「ゆみさんは、嬉しくないのですか?優勝したんですよ」

太助は、バイクの後ろに座っているゆみに話しかけた。

「別に・・」

ゆみは、卒業試験で優勝したことには興味なさそうに答えた。

卒業試験も終わり、いよいよ明日は宇宙戦士訓練学校の卒業式だった。明日の卒業後は、太助は宇宙戦艦ヤマトの機関担当の新人乗組員として配属になる。ゆみは、4月からは、佐渡先生の推薦もあって大学の医学部に入学だ。

太助以外に、坂本、加藤四郎、お蝶婦人も宇宙戦艦ヤマトの新人コスモタイガー隊員として配属になることになっていた。

明日の卒業前に、太助がどうしても、ゆみに見せたいものがあるというので、ゆみは太助のバイクの後ろにまたがっていた。普段ならば、太助にどんなに誘われても、太助と一緒にバイクに乗って、どこかへ出かけることなどぜったいに無かった。

しかし、卒業前だし、卒業したら別々の進路でもう会えなくなってしまうのだからと、太助にどうしてもと言われて、ゆみは、どうせ今晩だけなのだからと、太助のバイクの後ろにまたがったのであった。

「ゆみさん、コスモタイガーは何色に塗ることにしたのですか?」

バイクを運転しながら、太助がゆみに聞いた。

「ピンク、淡いピンク」

「ピンクか。ピンク!うん、ゆみちゃんらしい!可愛くていいですよ!」

太助は、ゆみの口からピンクという女の子らしい言葉が出たのが嬉しくて、叫んでいた。と、ゆみが太助の被っているヘルメットの上からポンと軽く頭を叩いた。

「え、なに?」

「今、あんたさ、あたしのことをゆみちゃんとか呼んだでしょう」

「ああ、つい。ゆみさん、ごめん、ごめん」

太助は、ゆみにポンと叩かれたことを逆に嬉しそうに答えた。

「まあ、いいか。あんたとも、明日でお別れだものね。もう一生会うこともないし」

ゆみが、太助に言った。

「え、それは進路が違うから今のように毎日は会えなくなってしまうけど。一生会うことはないは大げさですよ」

太助は、ゆみに言った。

「あのう、宇宙戦艦ヤマトなのですが、明日の卒業式が終わったら、そのまま配属になる人たちは皆、ヤマトに乗りこんで、オリエンテーション、新人研修を兼ねた2週間のテストセーリングに出航するんです」

太助は、明日から自分が配属になる宇宙戦艦ヤマトの予定について、ゆみに述べた。

「2週間したら、研修を終えて、また地球に戻ってこれるんです。2週間後にどこかで会いましょうよ」

太助は、ゆみに提案した。

「そうだ!原宿の竹下通りなんてどうですか?竹下通りも、かなり復興が進んで、おしゃれなお店とか立ち並んでいて、けっこう賑わっているみたいですよ」

太助が言った。

「なぜ?」

「え、だって、竹下通りで待ち合わせなんて、デートっぽくてなんか良くないですか?それとも、もう少し大人っぽく青山通りで待ち合わせましょうか?」

「なぜ、なんであたしが、太助なんかと待ち合わせしなくちゃならないの?」

「え、いやだな。ゆみさん」

太助は、勝手にちょっと照れながら返事した。

「ほら、俺、ヤマトの新人研修で2週間ほど地球を離れなきゃいけないから、2週間後に久しぶりに会いましょうよってだけですよ」

太助は、少し照れながら言った。本当は、そのときに指輪を渡して、ゆみにプロポーズしようと思っている太助だった。

「で、あたしは、いつまでこのバイクに乗っていなきゃならないの?」

「ああ、もう着きます。っていうか、もう目の前です」

そう言うと、太助は、その先にあった駐車場のバイク置き場にバイクを停めた。ゆみは、バイクの後ろから降りると、周りを見渡した。そこは、どこかの公園の入り口にある駐車場らしかった。

「ゆみさん、ここって初めてですか?」

「うん」

「英雄の丘っていう公園です。丘の上に沖田艦長の大きな銅像があるんですよ」

太助は、先に立って公園の中へと歩きながら、ゆみを案内した。

「沖田艦長って知っていますか?」

「なんか宇宙戦艦ヤマトの・・」

「ええ、初代艦長です。その方の大きな銅像がこの公園の丘の上にあるんです」

「あたしに見せたいものって、その銅像のこと?」

「いいえ、違います。そこの銅像の近くにあるものではあるのですが・・」

太助は、丘の上に続いている公園の道を、ゆみと歩きながら話していた。

太助のおじいちゃんにつづく

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