今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

76 なつかしい話

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「なんだか久しぶりだな」

隆は、朋子や、朋子が連れて来た夕子と夕子のお母さんとともにリビングのソファに腰掛けながら話した。

「本当、久しぶりだよね!」

朋子も、隆に返事をした。

「どうぞ」

ゆみが、キッチンの奥からお盆に皆の分のお茶を持って、リビングに来た。

「ゆみちゃん、久しぶりだね。高校はどう?」

朋子は、ゆみから自分の分のお茶を受け取りながら、ゆみに言った。

「高ぉ、高校。高校、うん、まだお友だちあんまりいないんだけど楽しいよ」

ゆみは、朋子に辿々しい日本語で答えた。

「なんか、しばらく会っていない間に、またゆみちゃん日本語苦手になったでしょう?」

朋子は、そんな辿々しい日本語のゆみの頭を撫でながら言った。

「ゆみは、もう少し日本語の勉強をしなくちゃだめだよな」

隆は、辿々しい日本語で話すゆみのことを見つつ、言った。

「日本語のお勉強はしてる?」

「うーん、あんまり・・お引越してきてから日本語の先生いないんだもん」

ゆみは、朋子に答えた。

「今の学校、日本人が誰もいないし」

「そうだよね。学校に日本人が誰もいないと、日本語を話す機会がぜんぜん無くなってしまうものね」

朋子は、言った。

「高校?ゆみちゃんって高校に行っているの?」

夕子は、2人の会話を聞いて、朋子に聞いた。

「そう、そうなんだよ。ゆみちゃん、すごいんだよ。中1でリバーデールのPS.141から転校するときに、PS.141の先生に中学でなく、飛び級で高校に進級していいからって言われて、今のマンハッタンのお嬢様高校に通うことになったんだよ」

朋子が、ゆみのことを、まるで自分のことのように夕子に自慢した。

「すごいね。お嬢様高校なんだ・・」

「別にお嬢様高校ではないよ。お嬢様高校なんて俺の給料じゃ入れさせてやれないから、ただ女子校ってだけだよ」

隆がお嬢様高校を訂正した。

「ええ、でも公立で成績の良い女の子しか入学できない高校じゃない」

ゆみの高校のことを知っている朋子が、隆に言った。まあなって感じで隆は頷いた。

「でも、あたし、リバーデールのPS.141も好きだったよ。シャロルがいて、マイケルがいて、あと良明君もいて」

ゆみは、懐かしそうな感じで、当時リバーデールに住んでいた頃に通っていた中学のクラスメートの名前を出した。

「そうか。ゆみちゃん、シャロルと仲が良かったものね」

「うん」

朋子に言われて、ゆみは頷いた。

「シャロルか。シャロルとは、俺もしょっちゅう一緒にボウリング場行ったり、野球場に行ったりしていたな」

隆も、当時のリバーデールの頃のゆみの友だちの名前が出てきたので、懐かしそうだった。シャロルやマイケル、良明とは、隆もゆみの友だちということで、どこかに遊びに行きたいと言われては、車であっちこっち連れていたのだった。

「そういえば、シャロルとかってどうしちゃったの?」

「お母さんの実家のバファロー(NY州北部)に引っ越してしまったよ。親が、お父さんとお母さんが離婚してしまったんだよ。それで弟はお父さんの実家のシアトルについていって、シャロルは母親と一緒に行ったらしいよ」

「そうなんだ」

朋子は、隆からシャロルの話を聞いて頷いた。

「その前に、マイケルがPS.141の学校の雰囲気が悪くなってきたので、父親が仕事でシカゴに転勤になったのをきっかけにして転校してしまっただろう」

「そうか。マイケルも離婚なの?」

「いや、マイケルの家は離婚はしていないよ」

「で、シカゴに引っ越した後、今度はシャロルが離婚で引っ越しちゃったんだ」

「そう」

隆は、朋子に答えた。

「それからさ、PS.141の学校の雰囲気は悪くなっていただろう。このまま、ゆみを通わせておいて良いか迷って、担任の先生に相談したら、飛び級の話が出て、今の高校に転校させてもらえたので、マンハッタンに引っ越したのさ」

隆は言った。

「隆さんの会社も、マンハッタンですものね」

「ああ、俺の会社にも近いし、ゆみも高校まで歩いていける距離だし、ここのアパートメントは」

隆は答えた。

「ゆみちゃん、マイケルやシャロルとは会っている?」

「ううん。遠いもの。シャロルとはいつもチャットはしているけど・・」

「そうか。シカゴはニューヨークから遠いものね」

「バファローも遠い・・バスに何時間も乗らなきゃいけないの」

「うん。でも、チャットはしているんでしょう?」

「うん。朋子お姉ちゃんともいつもしているよね」

「そうだね」

朋子は、ゆみに頷いた。

「夕子とはチャットしている?」

「したことない。ジャパンもチャットできるの?」

ゆみは、朋子に聞かれて、夕子の方を見ながら答えた。

「それは出来るだろう。おまえ、美香ちゃんとは、いつもチャットしているんだろう?」

「あ、そうか。美香ちゃんとチャットしてた」

ゆみは、兄の隆に言われて、日本の美香とチャットしていたことを思い出した。

「美香ちゃんって?」

「良明の妹だよ。あれ、朋子ちゃんは良明のこと知らないんだったけ?」

「知っているよ。ああ、良明の妹さんか。確か3人いるんだよね」

「ああ、3人いるうちの一番上の妹。ゆみと同い年の子さ」

隆は、朋子に答えた。

「なるほど。で、その美香ちゃんのお兄さんの良明が、夕子と同じクラスなんでしょう」

朋子が言った。

「え?良明と同じクラス?」

「そう、そうなんです。うちの日本で通っていた中学校の、私と同じクラスに、良明が転校してきたんです」

夕子が、隆に言った。

「へえ、そうなのか。世間ってけっこう狭いな」

隆は、答えた。

「ゆみ、聞いたか?良明が今、夕子ちゃんと同じ学校のクラスに通っているんだって」

隆は、日本語が辿々しいゆみでも聞き取りやすいように、少しゆっくり目の日本語で、ゆみに説明した。

「え、良明くん!」

ゆみは、懐かしそうに返事した。

ゆり子先生につづく

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