今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

部屋割り

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「どうする?」

ゆみは、麻子たちと話していた。

これから4組はホームルームが始まるので、音楽室に集まっていた。4組の担任は音楽の大友先生なので、4組ではホームルームを教室でなく音楽室で行うことも少なくなかった。

「ゆみ。一緒の部屋になろうね」

麻子は、ゆみに声をかけた。麻子の膝には、尾瀬山旅行の用紙がいっぱい載せられていた。

「由香、一緒の部屋になろうよ」

「久美子、私たちと一緒の部屋でいいよね」

「うん」

村岡久美子は、佳奈に答えていた。

「じゃ、俺も一緒の部屋でいいよ」

柳瀬が久美子たちに冗談で言った。柳瀬は、身体は小柄だが男子バスケ部だ。

「え、いいよ。柳瀬、本当に私たちと一緒になる?」

久美子が、柳瀬に返事した。

「皆、柳瀬が部屋にいても普通に着替えるからね。耐えられるかな?」

「ね、同じ部屋になったら、もう皆普通に着替えるよね」

久美子や佳奈が、ニヤニヤしながら柳瀬に言った。

「いやあ、やっぱ、やめとくわ」

柳瀬は、女の子たちに詰め寄られて冷や汗をかいていた。

「宮本先生も尾瀬、一緒に行くんですか?」

ゆみは、膝の上にいるブータ先生の頭を撫でながら、側にいた宮本先生に質問した。

「ええ、行くわよ」

宮本先生は、ゆみの横のひな壇に腰掛けると、ゆみに返事した。

「でもね、前半だけしか参加できないの。後半は、ちょうど7年生の補習授業と重なっているから」

「そうなんだ。ずっと先生と一緒に登りたかったな」

「先生も、ゆみちゃんと一緒にずっと登りたかった」

宮本先生は、ゆみの頭を撫でてくれながら答えた。

「でも、7年の補講もやらないわけにはいかないのよ。来年からは、副担任じゃなくて8年生の担任を任せてもらえるかもしれないから」

「ええ、先生、出世するんだ!それは、来年に担任になるかもしれないクラスだし、出ないといけないよね」

「そうね。出世できるかもしれないしね」

宮本先生は、ゆみの言葉に笑っていた。

「ええ、先生。出世するの?」

麻子が、2人の話を聞いて、話に加わってきた。

「出世じゃないわよ。来年は8年の担任になるかもしれないって話」

宮本先生は、麻子に答えた。

「あ、ゆみもいるじゃない。ゆみも、あたしたちと同じ部屋で良いよね」

まゆみがやって来て、麻子とゆみに言った。

「うん。だから、もうさっき、ゆみには一緒の部屋になろうって話してある」

麻子が、まゆみに答えた後で、ゆみに聞いた。

「ね、ゆみ?」

「え、う、うん」

ゆみは、あまり乗り気じゃない感じで、麻子に頷いた。

「どうしたの?あたしたちと同じ部屋じゃ嫌なの?」

「嫌じゃないけど・・」

ゆみは、宮本先生に寄りかかりながら答えた。そんなゆみのことを、宮本先生は優しく抱きかかえてくれた。

「あたし、お姉ちゃんと一緒の部屋がいいかなって・・」

ゆみは、小声で答えた。

「え、それはダメでしょう。祥恵は1組だよ。ゆみは4組なんだから、1組の女子と同じ部屋にはなれないでしょう」

麻子が言った。

「だよね」

ゆみは、麻子に答えた。

「ゆみは1組がいいの?」

「ううん。あたし、お母さんやお姉ちゃんたちがいないところでお泊まりしたことないのよ。なんか不安で」

「大丈夫!そんなこと気にしなくても」

まゆみが、ゆみに言った。

「うん!大丈夫、大丈夫!ゆみも、あたしたちと寝よう」

麻子も、ゆみに言った。

「ゆみちゃん、寂しかったら、先生も一緒の部屋にしてもらおうかな」

宮本先生が、ゆみに言った。

「え、先生も、生徒たちと一緒に寝るの?」

「やっぱり嫌よね。先生がいるのは。中等部最後の旅行なんだし、生徒たち同士で泊まりたいよね」

宮本先生は、麻子に聞かれて答えた。

「うん。っていうか宮本先生だったら、一緒の部屋でも、あたしは良いんだけど」

麻子は、宮本先生に答えた。

「あたしも、宮本先生なら一緒でも良いよ。でも、先生って、先生たちの部屋があるんじゃないですか?」

まゆみが宮本先生に聞いた。

「そう。先生の部屋っていうのはあるんだけどね。今年の9年生は、女性の先生が、私と塚本先生しかいないじゃない。だから女性の先生は、生徒たちと同じ部屋で寝てもいいって言われているのよ」

「うわ、それじゃ、宮本先生も一緒の部屋ね!」

「先生と同じ部屋でお泊まりできるんだ!」

ゆみも、麻子やまゆみたちと一緒になって、宮本先生が一緒に泊まれることを喜んでいた。

「あれ、ゆみは祥恵と泊まるんじゃなかったの?」

宮本先生に寄りかかって喜んでいるゆみに、麻子がいじわるそうに言った。

「え・・」

ゆみが、麻子への返答に困っていると、

「うそうそ、一緒にお泊まりしよう!」

麻子がゆみに言って、皆は手を取りあって一緒の部屋になったのを喜んでいた。

「皆、それぞれ部屋割りは決まったかな?」

大友先生が言った。

「はーい」

ひな壇で生徒たち同士、雑談をしていた皆は、大友先生に返事した。

一見すると、音楽室のひな壇に皆、仲の良い子同士で座ってホームルームをしているというよりも、まるで雑談しているだけに見えるのだが、これがいつもの4組のホームルームの時間だった。

「ゆみも、部屋は決まったのか?」

大友先生が、ゆみに名指しで聞いてきた。

「あ、はい」

ゆみが答えると、

「あたしたちと一緒です」

「ね、一緒の部屋なのよね」

麻子と宮本先生も答えた。

「そうか。それは良かった」

それから、大友先生は正面を向いて、皆に向かって言った。

「ゆみは、初めての登山だし、もしかしたら何か困ったことがあるかもしれない。彼女のお姉さんは同じ学年の1組にいるかもしれないが、ゆみは皆と同じ4組なんだから、なるだけ4組の皆で相談して解決するようにしような」

そう言って、大友先生はホームルームを締めくくった。

「ね、ゆみ」

学校からの帰りの井の頭線の中で、祥恵はゆみに言った。

「今日さ、大友先生に会って、尾瀬のときに、ゆみが寂しがったりしても、なるだけ私は見ないでいいって言われたよ。4組の皆でなんとかするからって」

祥恵は、ゆみに大友先生に言われた言葉を繰り返した。

「そうなの?」

「うん。私は、ゆみのこと面倒見なくていいんだから楽だけどね」

祥恵は、ゆみにちょっとイジワルそうに言った。

「ええ、お姉ちゃん一緒にいてくれないの?」

ゆみは、祥恵の手を引いて甘えたが、

「まあ、いいか。今は、お姉ちゃんにいっぱい甘えれるから」

井の頭線を降りると、ゆみは祥恵の腕にぶら下がりながら東松原駅前の商店街を家に向かって歩いていた。

野口先生につづく

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