今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

新入部員

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「あ、いや、良明たちを誘っていたんだけど・・」

大友先生は、まゆみに返事した。

「先生って、天文部の顧問だったんですか?」

まゆみは、大友先生に聞いた。

「ああ、小汀と田中に天文部をやりたいと言われて、顧問になったんだ」

「うちに天文部なんて部活があったことも知らなかったよ」

大友先生とまゆみが話しているのを見て、麻子とゆみも大友先生の側にやって来た。

「あたしも知らなかった」

まゆみも、麻子に同意した。

「それは、知らないはずだよ。つい先月に出来たばかりのクラブだからね。小汀がやりたいと言って、先生が顧問になって作ったばかりのクラブだ」

大友先生は、皆に言った。

「それじゃ、まだ誰も部員とかいないとか」

「ああ。小汀が部長で、あとは部員は田中と鳥居だけだ」

「それで、顧問自ら新人部員の勧誘ですか?」

「まあ、別に勧誘ってわけではないんだけどな。良明が星とか好きって聞いたから」

大友先生は、まゆみたちに説明した。

「天文部ってどんなことするんですか?」

「星の、星座とかを調べたり、あとは時々、夜遅くまで学校に残って、校舎の屋上から望遠鏡で星を覗いたりするだけだ」

「夜遅くに、学校の屋上とかで星を眺めるんだ」

「なんか面白そうじゃん。あたしも入りたいな」

「じゃ、お前たちも入部するか?」

「うん。栗原さんも入ろう!」

まゆみが、淳子のことを誘った。

「え、ええ」

栗原淳子は、良明の方をチラッと見た。良明は黙ったままだ。

「はい。入ります!」

栗原淳子は、勝手に良明の手も上に上げさせて、入部すると言ってしまっていた。

「それじゃ、4人入部か」

大友先生は、麻子とまゆみ、良明、栗原淳子の顔を見て頷いた。

「大友先生、よかったですね。いきなり4人も部員増えて」

馬宮先生が、大友先生ににっこり笑顔で話した。

「大友先生、天文部を作ったときは、部員たった3人でやっていけるのかなって話していたんですよね」

「でも、これで部員7人だ」

大友先生は、馬宮先生に笑顔で返事した。

「ゆみ。お前も入部するか?」

大友先生は、1人馬宮先生の後ろで静かに皆を眺めていたゆみに質問した。

「ええ、あたしは無理かな」

ゆみは、大友先生に答えた。祥恵がバスケットボール部に入るって聞いたときから、部活動にちょっと興味はあったのだが、身体の弱いゆみは部活を諦めていた。

「やりたいなら、天文部なら大丈夫だぞ。運動部じゃないから身体を動かしたりしないから」

大友先生は、ゆみに言った。

「ゆみちゃんも、やろうよ」

「屋上で星を覗いたりするんだってよ」

「星が出るまでの間は、バーベキューとか夜ごはんを食べたりするんだぞ」

大友先生が、麻子の説明につけ加えた。

「興味あるけど、夜って遅いの?」

「そんなに遅くはないさ。9時とか10時ぐらいだよ」

大友先生は、ゆみに答えた。

「それじゃ、ゆみちゃんは、もう寝ちゃっているじゃない」

馬宮先生が、ゆみの代わりに答えた。

「うん」

「ゆみって、何時にいつも寝ているの?」

「夜9時」

「9時には寝ちゃうんだ。早いね」

「それ以上、起きていると次の日、体調が悪くなちゃうの」

「そうか。それは天文部はさすがに無理だな」

大友先生は、苦笑していた。

「栗原さんも星とか好きなの?」

「そんな好きってわけではないけど・・」

栗原は、まゆみに答えた。

「そうか。じゃ、あたしと同じだね。あたしも、星はそれほどでも無いけど、なんか屋上で集まって、バーベキューしたり星空眺めたりするのが楽しそうだから」

「そんな感じかな」

さっきは、きゃきゃ言っている女子が苦手と思っていた栗原淳子も、しっかりまゆみと話し、笑いあっていた。

「お、部長来たか」

大友先生は、音楽職員室に入ってきた小汀と田中の姿を見つけて、声をかけた。

「新しく部員増えたぞ」

それから皆は、大友先生を囲んで雑談していた。部員ではないゆみと馬宮先生まで混じって、雑談していた。

「あの、ゆみさん・・」

栗原淳子は、ゆみのことを呼んだ。

「はい」

ゆみは、淳子に返事した。ゆみは、2組の栗原淳子とお話しするのは初めてだ。

「ゆみさんって飛び級で中等部になったんですよね」

「ええ」

ゆみは、淳子に返事した。

「なんかさ、2組以外のほかのクラスの子って良明ぐらいしか知らなかったんだけど、ゆみさんのことは飛び級で進級したとか聞いて、気になっていたんですよ」

「うわ、気になっていたんだってよ」

麻子が、ゆみに淳子の言葉を繰り返した。

「え、何を気にされていたんだろう?」

ゆみも麻子に返事した。

「ああ、別にそんな気にしていたわけじゃないんだけど。なんか可愛らしい子だなって」

「うん。可愛いのだったら、確かにゆみは可愛い」

麻子とまゆみが答えた。それを聞いて、馬宮先生も大きく頷いていた。

「うちの弟みたい。いま幼稚園の年長さんなんだけど」

「弟・・妹じゃないんだ」

ゆみは、つぶやいた。

「良いんじゃない。ゆみちゃんは、いつもスカート履かないし、ズボンばかりだから弟で・・」

馬宮先生は、自分の履いている花柄のフレアースカートを揺らしながら、ゆみの頭を撫でた。

ユーレイ部員につづく

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