今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

59 バラバラ

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「学校からお手紙が来ていたわよ」

お母さんは、夕食のとき、祥恵とゆみに言った。

「え、何の手紙?」

祥恵は、お母さんに質問した。

「学校の進級の件みたいよ」

「進級って?もしかして留年とか」

「そうね、祥恵は自分が留年するかもしれないって不安があるの?」

「え?」

祥恵は、お母さんの方を見つめ直した。

「いや、別にないけど。っていうか、ちょっと試験の成績がどうなのか不安が・・」

「じゃ、留年かもしれないわね」

お母さんは、悪戯っぽく祥恵に言った。

「留年って?」

ゆみは、お母さんに聞いた。

「成績が悪いからもう一回、7年生をやり直してくださいってこと」

「お姉ちゃん、もう一回7年生になるの?」

「さあ、どうかしらね」

お母さんは、ゆみに困った表情をしてみせた。

「お姉ちゃんが留年するなら、あたしも留年するよ。お姉ちゃんと同じが良いもの」

「あんたバカじゃないの。私が留年だと、同じに留年するとか」

祥恵は、ゆみのことをバカ呼ばわりした。

「はいはい、大丈夫よ。2人とも留年じゃないです。ちゃんと8年生になれました」

お母さんは、心配そうな2人に学校から来た手紙の内容を読み上げてくれた。

「祥恵は、8年1組。ゆみは8年4組ですって」

「ああ、良かった。マジで試験の結果が・・留年だったらどうしようかと不安だった」

祥恵は、お母さんから聞いてマジで安心したようにつぶやいた。

「え?なんで、なんで、あたしが4組なの?」

ゆみは、お母さんに聞き返した。

「え?お母さんもわからない。クラス替えなんじゃないかしら」

「え、嫌だよ!そんなの。せっかくお姉ちゃんと同じ1組なのに、どうして、あたしだけ4組に変わらなきゃならないの?それは、ぜったいに反対する、抗議する」

ゆみは、お母さんに文句を言った。

「っていうか、ゆみだけがクラス替えじゃないかもしれないよ。たまたま私は同じ1組ってだけで、他の子たちも皆、クラス替えになっているのかもしれないよ」

「でも、嫌だよ。お姉ちゃんが1組ならば、あたしもぜったいに同じ1組がいい!」

ゆみは、祥恵にいった。

「そんなこと言ったって仕方ないでしょう」

祥恵は、ゆみに言った。ゆみは、大好きなお姉ちゃんと違うクラスになるのが納得のいかない様子だった。そんなゆみの態度をみて、これは母親として私が先生に直談判しに行ってあげないとダメかなと思っていた。

「ね、麻子は、学校から進級のお手紙来た?」

次の日のお昼休み、音楽室でお弁当を食べながら、ゆみは麻子に聞いた。

「来た。来たよ、ちゃんと進級できていた!」

麻子は、答えた。

「マジで、麻子良かったじゃん!私もできたよ。4組だって」

それを聞いて、真弓が麻子におめでとうと言った。

「真弓、4組なの?やったね!あたしと同じ」

「麻子も4組だったの!また同じ組だね」

真弓と麻子は、同じ組になれたことを喜びあっていた。

「ゆみは?何組?」

「8年になれたよ」

「そりゃ、ゆみは、8年にはなれるでしょう。留年なんかするわけないじゃん。で、何組?」

「4組」

「そうか。3人とも同じクラスか!やったね!」

麻子と真弓は、3人が同じクラスなのを喜んでいたが、ゆみはそうでもなかった。

「ゆみは、皆一緒なのに嬉しくないの?」

「嬉しいよ!嬉しいんだけど、お姉ちゃんが1組になってしまったの」

ゆみは、2人に答えた。

「そうか、それは残念だね」

「でも、クラス違っても、学年でのイベントは一緒にやれるんだから」

麻子と真弓は、寂しそうなゆみを励ました。

「ゆみちゃんは、お姉さんのことが好きなんだものね。お姉さんも4組に変えてもらえたら良いのにね」

間宮先生が、ゆみに言った。

「そんなこと出来るの?」

「先生にもわからないけど、8年の先生に聞いてみたら?」

「うん、そうする!」

ゆみは、間宮先生からクラスを変えてもらえるように言えることを聞いて安心した。

「なんだ、お前は、先生のクラスになるのがそんなに嫌なのか?」

奥の自分の机に腰掛けていた大友先生が、ゆみに聞いた。

「え?」

「あ、そういえば4組って大友先生が担任だったね」

大友先生に言われて、麻子が気づいた。

「先生の担任になるのが別に嫌なわけじゃないよ」

「じゃ、4組だって良いだろう?麻子や真弓もいるんだし」

大友先生は、ゆみに聞いた。

「うん、別に良いよ。でね、大友先生って4月からあたしの担任の先生になるんだよね?」

「ああ」

「それだったら、担任の先生に、かわいい生徒からお願いがあるの。麻子や真弓とは一緒のクラスが良いから、あたしは4組で良いんだけど、あとお姉ちゃん、今井祥恵のことも4組にして欲しいの」

ゆみは、大友先生の前で手を合わせながらお願いした。

「手なんか合わせたって、先生は、別に仏様じゃないぞ。それに祥恵さんは4組ではないし、4組にはしない」

大友先生は、ゆみにはっきり言った。

「どうして?」

「もし祥恵さんのことを4組にしたら、ゆみのことを4組に替えた意味がなくなるだろう。君は、またお姉さんに甘えてばかりで何も成長できなくなってしまうだろう」

大友先生は、きっぱりと、ゆみに返事した。

「あの、大友先生。もしかしてなのですが、ゆみちゃんのこと4組にしたのって、大友先生ですか?」

間宮先生は、ゆみや麻子たちが午後の授業に行ってしまった後で、大友先生に聞いた。

「ああ」

「やっぱり。さっきの大友先生の話していたの聞いて、まさかそうじゃないかなと思いました」

「だって、姉の祥恵と一緒のクラスにしておいたら、あいつのためにならないでしょう」

「確かにそうですけど。ゆみちゃん、本当にお姉さんのこと大好きなんですよね」

「私も、それは彼女が好きなら、好きなお姉さんと一緒にいさせてあげたいけど。それでは本当に彼女のためにはならなくなってしまうだろう」

「それは、そうですけどね」

間宮先生は、大友先生に頷いた。

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