今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

タコとの戦い

もっと詳細を確認する

「ゆみちゃん、ちょっと可哀想だったな」

あゆみは、玄関に入っていったときに、ゆみが入学式用に着ていたスカート姿を思い出しながら言った。

「ゆみちゃん、あたしたちと地下シェルターとか貧民街にいたときは無理して強がっていたけど、本当は戦いなんてしたくないんだよね、きっと」

あゆみは言った。

「そんなこと言ったって仕方ないだろう。あいつが一番俺たちの中で上手く戦えるんだからさ」

竜は、少し寂しげなあゆみに言った。

「それはそうだけどさ。ゆみちゃんの言うとおりなんだよね。あたしや竜は、これから訓練学校に行って宇宙戦士になるけど、ゆみちゃんは、もう一般市民なのよ。わざわざ危険なところに行かせたら可哀想よ」

「それじゃ、お前がゆみの代わりに宇宙人を倒せるのかよ?」

「今は無理・・」

「無理だったらしょうが無いだろう」

竜は、あゆみに言った。

「わかった。今は、ゆみちゃんにも一緒に戦ってもらうけどさ。あたしや竜が学校を卒業して立派な宇宙戦士になれたら、今度はあたしたちが、ゆみちゃんのことを守ってあげようね」

「ああ、もちろん」

竜は、あゆみに答えた。

「一生無理じゃねー。だって竜が立派な宇宙戦士って俺に想像できないよ」

ほかの男の子たちが、2人の会話を聞いていてつぶやき笑っていた。

「それ、どういう意味だよ」

竜は、自分のことを笑われてふて腐れていた。

「お待たせ!」

着替え終わったゆみは、バイク置き場で待っている皆のところにやって来た。

「おお、やっぱ、お前はその格好が一番似合うぜ」

竜は、自分のバイクの後ろの座席にまたがっているゆみに言った。

「それ、どういう意味?」

「え、要するに、あんな変なチャラチャラした服装しなくても、ジーンズとかの方がお前らしいってことだよ」

活発なゆみが好きな竜が答えた。

「それ、ちっとも褒められてない。女の子として嬉しくないな」

ゆみが、竜に言った。

「まあ、俺はお前のことを女の子としてなんか見てないしな。俺の一緒に戦う相棒だから」

竜は、バイクを走らせながら、後ろのゆみに言った。

タコたちの暴れている港までは、だいたい7、8分というところか。竜たち皆の運転しているバイクが、港に乗り入れた。

「ずいぶん大きいね」

ゆみは、家の窓から見ていたときのタコ型乗り物が、間近で見ると意外に大きなことに驚いた。

「そうね。Dプランで行こうか!」

ゆみは、竜をはじめとするバイクに乗っている子どもたち皆に声をかけた。

「了解!」

竜のバイクと何台かは直進し、ほかの何台かは左右それぞれに別れた。正面から突っ込んでいく竜たちのバイクに、左右から突っ込んでいくバイク、それらがタコの足下でぐるぐると回転してみせる。タコは、足下のバイクを追っかけ回して、8本の足がもつれひっくり返って倒れた。

「一丁あがり!」

子どもたちは、次のタコのところに移動して、次々とタコの足をもつれさせてひっくり返していく。

「ね、竜。次のタコには、ギリギリまで突っ込んで、そのままタコの上をジャンプして飛び越えて!」

ゆみは、竜に指示すると、自分はバイクの後ろに立ち上がった。

竜は、後ろに立っているゆみを上手くバランス取りながら、建物の脇に斜めに立てかけてあった板を利用して、そのままタコの上空にジャンプした。

「行くわよ!」

竜のバイクがタコの上空に飛んだときに、ゆみはそのままバイクから飛び降りて、タコの頭、コクピットの中に飛びこんだ。コクピットの中にいた宇宙人は、突然飛びこんできたゆみに驚いている。その宇宙人の頭の上に、ゆみはお尻から飛び降りた。

「この頭だけの化け物が!」

ゆみがお尻から宇宙人の頭に飛び降りると、最近、成長して大きくなってきたゆみのお尻につぶされて宇宙人はぺしゃんこになってしまった。

ぺしゃんこの宇宙人をコクピットから地面に落っことした。宇宙人は、地面に落下してぺしゃんこの平らになってしまった。

誰もいなくなったタコ型乗り物のコクピットの座席に、代わりにゆみが座って、ハンドルを握る。そのまま、ハンドルを操作して、乗っ取ったタコ型乗り物で、別のタコのところに反転して向かっていく。

「ペラペラ・・」

味方が戻ってきたと勘違いしたそのタコの宇宙人が何かわからない宇宙語を話しかけてきたが、ゆみはそんな言葉などお構いなしに自分の8本の足で、そのタコのことを蹴っ飛ばした。タコはへなへなに倒れてしまった。

その後、ゆみが奪い取ったタコと竜たちのバイクは、港じゅうを暴れ回って、上陸してきたタコたちを皆一匹残らず倒してしまった。

「ゆみちゃん、あと一匹いる・・」

最後に残った一匹のタコが海上に停まっている宇宙船、母艦に向かって慌てて逃げていく。

「逃がすもんか!」

ゆみは、自分の乗っているタコを操作して、全速力でそのタコに迫っていく。追われるタコは、港の岸壁から飛び上がって、海上の宇宙船の開いているハッチの中にジャンプした。ゆみのタコも、そいつを追ってジャンプする!

「竜!バイクでこっち来て!」

「了解!」

ゆみに呼ばれた竜は、バイクで、ゆみの乗っているタコの横に飛び上がった。ゆみは、タコのアクセルのレバーを思い切り踏み込むと、タコから竜のバイクへ飛び移った。

「着地!」

ゆみは、竜のバイクの後部座席にうまく乗った。2匹のタコのほうは、開いている宇宙船のハッチから中に入ると、操縦者のいないゆみが乗っていたタコの方が大爆発、宇宙船の中で炎上した。タコの炎上した炎は、宇宙船へと燃え広がって、宇宙船はそのまま木っ端みじんに爆破してしまった。

「やったな!」

「うん」

少年盗賊団の子どもたちは、バイクを岸壁に停車させると、海上で跡形も無く燃え尽きてしまっている宇宙船を眺めていた。

「帰ろうか」

ゆみが皆に言うと、皆はバイクを反転させて、自分たちの自宅に向かって戻っていった。

お姉ちゃんの雷につづく

読進社書店 新刊コーナー

Copyright © 2016-2024 今井ゆみ X IMAIYUMI All Rights Reserved.

Produced and Designed by 今井ゆみ | 利用規約 | プライバシーポリシー.