今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

お姉ちゃんの雷

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「俺たちって、さすがだな」

竜は、帰り道のバイクを運転しながら勝利に酔いしれていた。

「でも、まだ後、2隻もいるからね」

あゆみは、上空に待機している2隻の球体の宇宙船を指さしながら言った。さっき、港で少年盗賊団たちが倒した球体の宇宙船と同じ同型の宇宙船が、まだ上空に2隻も待機していたのだった。

「あいつらも倒しちゃおうか?」

ゆみは、竜のバイクの後ろに腰掛けながら言った。

「いいよ。どうやって、あの高いところまで行く?」

竜は、ゆみに質問した。

「さすがに、あの高さじゃ、バイクでは無理か」

ゆみは答えた。

「まあ、いいさ。あと2隻ぐらいならヤマトが倒してくれるだろう」

竜が言った。皆は、バイク置き場にバイクを戻すと、ゆみの自宅、リビングルームに戻ってきた。お母さんが、お疲れさまのジュースとお菓子を出してくれた。

「ゆみちゃん。宇宙人が攻めてきちゃったから、今日の入学式は延期ですって」

お母さんは、ゆみに伝えた。

「良かった。この格好じゃ、さすがに入学式出れないものね」

ゆみは、タコ型乗り物の機械油で汚れまくっている自分の服装を見て言った。

「あなたたちの訓練学校も延期ですってよ」

お母さんは、あゆみや竜たちにも伝えた。

その後、電話が掛かってきて、お母さんは電話に出ると、電話の相手との会話に夢中になっていた。なんか真剣な顔で話している。

「ゆみちゃん、お姉ちゃんがご用があるって」

電話の相手は、祥恵だったようで、ゆみはお母さんに呼ばれて電話に出る。

「もしもし、お姉ちゃん。あたしたち、すごいでしょう?」

ゆみは、電話に出ると、祥恵に自慢した。リビングのテレビでは、港でバイクに乗って大暴れしたゆみたちの様子がビデオに収められ、その映像が放送されている。テレビの報道キャスターは、小さな少年少女が自らの力で宇宙人どもを退治したと話題になっていた。

「あんたね、何をやらかしているわけ?」

祥恵は、電話越しにいきなり、ゆみのことを怒っていた。大活躍を褒められてくれるとばかり思っていたので、ゆみには意外だった。

「あんたはね、宇宙戦士でも何でも無いんだから、そんな危険な、余計なことをするんじゃないの!あんたのやったことで、こっちは大迷惑なんだよ!」

祥恵は、ゆみのことを怒鳴った。

祥恵の話によると、昨晩、地球の上空に現れた3隻の宇宙船は丘の上の町を見せしめの為に破壊した。その破壊力を見せつけることで、地球政府に降伏を迫ってきたのだった。

無用な殺生を避けたい地球政府は、とりあえず相手の要求に応じ、降伏することにした。その後、攻めてきた宇宙人と地球人がお互いに共存できる話し合いの場が持たれていたところだったのだが。そこへ、ゆみたちが港で大暴れして宇宙船を1隻破壊してしまったものだから、宇宙人たちは怒って、せっかくの話し合いが中断してしまったのだという。

「あんたたちのせいでね・・」

祥恵は、ゆみに小言を言い続けていた。

「まあ、これ以上あんたに、この話を続けても仕方ないから、もう話は辞めるけど、ゆみ!もう勝手なことをするんじゃないよ!」

祥恵は、お説教の最後をこう締めくくった。

「それでね、宇宙人たちは、宇宙船1隻を破壊しちゃったあんたたちのことを探しているから。このまま、そこに残しておいたら危険だから、これからお姉ちゃんは、ヤマトに乗るんだけど、あんたたちもヤマトに来なさい!」

祥恵は、妹のゆみに命令した。

「あたしたちって、あゆみちゃんや竜とか皆のこと?」

「そう。後、お母さんたちもよ」

「お母さんも?お父さんもってこと?メロディは?美奈ちゃんは?まりちゃんは?ギズちゃんは?」

ゆみは、祥恵に聞いた。

「あゆみちゃんたちも、うちの家族も全員、あんたが責任持って、ヤマトに連れてきなさい!」

「わかった。で、ヤマトはどこにいるの?」

ゆみは、祥恵に聞いた。

「ヤマトは敵に見つからないように、秘密の場所に隠してあるの。そこの場所へは、省庁の脇に、大統領の官邸があるでしょう。そこのお庭に大統領専用機が停まっているから。それに乗ってヤマトまで飛んでいくから。大統領のお庭に停まっている大統領専用機、そこまで皆を連れて来ること!わかった?」

「うん!」

「あとね、普通の道路は使ったらダメだからね。もし、あんたたちの姿を宇宙人たちに見つかったら殺されちゃうからね。だから、むかし貧民街から省庁まで下水道の中を移動していたのでしょう?その下水道の中を通って来なさい」

「わかった」

ゆみは、祥恵に返事した。

「ちゃんと皆と来れる?」

「うん」

ゆみは、祥恵に返事をすると、出かける準備のために電話を切ろうとした。

「あ、待って!」

祥恵が、ゆみに声をかけてきた。

「後ね。あなたは、ほら最近いつも履いているロングスカートあったでしょう。あれを履いて、こっちまで来なさい」

祥恵は、ゆみに着るものを指定した。

「ロングスカート?いつもの黄色いやつのこと?スカートって、下水道の中を歩くんだよ。歩きにくいと思うけど・・」

「下水道の中って言ったって、下水の中を歩くわけじゃないでしょう。下水の流れる水路の脇の道路を歩くんだから、スカートでも歩いてこれるよね?」

「まあ、歩いてこれるけど・・」

「それじゃ、スカートを履いてきなさい。わかった?」

「はい!」

ゆみは、電話を切ると、自分の部屋に行って、履いていたジーンズを脱いで、黄色のロングスカートに履き替えてから出てきた。

「これから、皆で大統領のお庭にある大統領専用機に乗りに行くから」

ゆみは、あゆみたちに祥恵に言われたことを説明して、美奈ちゃんたち、猫たち全員をお出かけ用のバッグに入れて、出かける準備をした。

お母さんは、皆がお腹空いたときのために、おにぎりをいっぱい作った。

数分後、皆は家を出て、お父さんが家の鍵を閉めると、マンション前のマンホールの蓋を開けて、そこから下水の中へと降りていった。

大統領機につづく

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