今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

ゆみの出撃

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「ダメよ!スターシャさん、あなたは、そんなことをしてはいけない!絶対に!」

ヤマトの医務室の窓からイスカンダル星の方を見ていたゆみは、イスカンダル星に向かって大きな声で叫んだ。

「だって、スターシャさん。あなたはお母さんなのよ」

ゆみは、ヤマトの窓から外に、聞こえるわけないイスカンダル星にいるはずのスターシャに向かって叫んでいた。

「どうしたの?ゆみちゃん」

森雪は、急に窓の外に向かって叫びだしたゆみに声をかけた。

「ゆみちゃん、もしかして何かを感じ取ったんだね」

宇宙戦士訓練学校時代からずっと一緒の同級生の太助がゆみに言った。ゆみは、太助に頷いた。

「ゆみちゃんの直感、センスは鋭いというか・・たぶん何かスターシャさんに関することで感じ取ったんだと思います」

太助は、ゆみに代わって、ゆみの気持ちを森雪に伝えた。太助には、ゆみが他の人にはない何か特別な第六感みたいなものを持っていることをわかっていた。森雪自身も、ゆみとの付き合いは太助ほど長くはないが、しばらく一緒の船室で暮らしていて、ゆみには何か特別な感情が強いことを感じていた。

「それは、なんとなく私にもわかるわ」

森雪は、太助の説明を聞いて返事した。

「どうしよう、あたし行かなくちゃ。うん、どうしても行かなくちゃ!」

ゆみは、誰に言うともなく1人つぶやいた。

「ゆみちゃん、どうしたいの?」

森雪が、ゆみに聞いた。

「雪さん、あたし行かなくちゃ。どうしても行かなくちゃならないの」

ゆみは、森雪に言った。森雪は、黙ってゆみに頷いた。

ゆみは、医務室を出て廊下を走り出した。

「ゆみちゃん、俺も行くよ!手伝うよ!」

ゆみが走り出したのを見て、太助も慌てて、ゆみの後を追って走り出した。

「待って!ゆみちゃん!」

そんな2人の後ろ姿を森雪が呼び止めた。森雪に呼び止められたゆみは、一瞬立ち止まって、森雪の方を振り向いた。

森雪は、医務室の奥の金庫の鍵を開けると、中から、ゆみが訓練学校卒業時に、学校からもらったコスモドラグーン、戦士の銃を取り出した。

「何かの時にきっと役立つわ。これ、持って行きなさい」

森雪は、金庫から取り出したゆみの戦士の銃をゆみに向かって投げてよこした。ゆみは、その戦士の銃を森雪から受け取ると、自分のジーンズのベルトに付いているホルスターに収めた。

「ほら、早く行きなさい!」

森雪に言われ、ゆみは急いで、また廊下を走り出した。が、また立ち止まって、森雪のほうに振り向いた。

「雪さん。あたしが戻ってくるまで、これを預かっていてもらえませんか」

ゆみは、そう言ってセーターの下に、首からぶら下げていた金色のハートのネックレス、ロケットを外して、それを森雪に投げて渡した。

「わかったわ」

森雪がネックレスを受け取ってくれたのを確認すると、ゆみは廊下を走っていった。

その後を太助も追って走って行く。2人は、廊下を走って、ヤマトの格納庫に向かっていた。

ヤマトの格納庫には、普段は待機中のコスモタイガーがいっぱい整列して駐車されている。が、今は皆、黒の艦隊との戦いに出撃してしまっているので、格納庫の中は見事に空っぽ、がらんどうだった。

そんな空っぽの格納庫の中、隅っこの方に一機だけ機体をピンク色に塗装されたコスモタイガーが駐車されていた。ゆみが訓練学校卒業時に、最優秀MVPを取ったご褒美に好きな色、ピンク色に塗装してもらったコスモタイガー機だった。

ゆみは、その自分のコスモタイガー機に向かって走って行く。

「こら!君は何をしている!?」

格納庫の倉庫番担当の田中が、コスモタイガーに走って行くゆみに怒鳴った。

「田中のおじさん、これから彼女が出撃します!あのピンクタイガーをカタパルトに乗せて発進準備お願いします!」

後から格納庫に入ってきた太助が、田中に伝えた。

「何を言っているんだ?第二艦橋からそんな出撃の指令は入ってきてないぞ。それに、戦いはもう既に終了しているだろうが。これから出撃しているコスモタイガーたちも、ここに戻ってくるんだぞ」

田中は、太助に答えた。

「でも、その、ゆみちゃんは、これから出撃するんです」

「ならん、ならん。そんな勝手なこと」

太助が、いくら田中に説明しても、田中は太助の説明を理解してくれなかった。

ゆみは、既に自分のピンクタイガーのコクピットに飛び乗って、ヘルメットも被りいつでも発進できる準備ができていた。

「太助!ピンクタイガーを発進させて!」

ゆみは、格納庫の入り口で田中と話し合っている太助に向かって叫んだ。

「はーい!ゆみさん、ただいま」

太助は、ゆみの方を振り向いて叫ぶと、田中のおじさんにピンクタイガーの発進を再度お願いした。

「ダメじゃ、ダメじゃ」

田中は、新人乗組員の太助のお願いなど聞いてもくれなかった。

「田中のおじさん、お願いします。彼女の機体を発進させてあげてください」

遅れてやってきた森雪も、田中にお願いした。

「あ、雪さん。しかし、そんな指令、第二艦橋から受けていないのですが」

田中は、森雪に答えた。

「時間が無いの。あの子の出撃に関しては、すべて私が責任持ちます。だから、発進させてあげてやってください」

森雪は、再度田中のおじさんにお願いした。

「まあ、雪さんがそこまで言うのなら発進させますけど・・」

田中のおじさんは、やっとピンクタイガーを発進させる気になってくれた。

田中は、格納庫のコントロールルームの中に入ると、そこのスイッチやレバーを押して、一番奥に駐車されていたゆみの乗るピンクタイガーを、発進用のカタパルトの上に乗せた。

「あの、何かお手伝いします」

太助もコントロールルームの中に入ってきて、田中に声をかけた。

「それじゃ、向こうのレバーを引いてくれ!」

田中に言われて、太助がレバーを引き、ピンクタイガーの発進を手伝っていた。

発進用カタパルトに乗せられたピンクタイガーは、格納庫に中央通路に移動し、そこから発進できる体勢になった。ピンクタイガーのコクピットにいるゆみは、エンジンをスタートし、レバーを引いてピンクタイガーを発進させる。

ピンクタイガーはカタパルトの上を離れ、格納庫中央通路を走り抜け、格納庫の外、宇宙空間へと飛び立っていった。

脱出船につづく

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