今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

貧民解放

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「祥恵くん、聞こえるか?」

長官から祥恵宛てに返事が来た。

「はい」

「今、さっきまで緊急の閣僚会議を招集して、大統領と相談していたのだが」

長官は、閣僚会議について祥恵に説明した。

「大統領に今、ヤマトで祥恵くんの家族に起こっていることを説明した。大統領としても、遅かれ早かれ貧民制度についてはいずれ廃止の方向で動くことにはなっていたんだが。今回の祥恵くんの家族に起こった問題をきっかけに、政府として、国民に対して謝罪することになった」

長官は、祥恵に報告した。

「それで謝罪なのだが、本日午後17時に大統領から国民への緊急のお知らせとして、テレビ、マスコミの前で会見するという方向で準備を進めている」

「そうですか。ありがとうございます」

祥恵は、長官に頭を下げてお礼を言った。お母さんも、初めて会う長官に頭を下げていた。

祥恵と長官との通信が終わった。

「祥恵さん、通信終わりましたか?それじゃ、医務室の雪さんから連絡入っています」

相原が、祥恵に言った。

「ありがとう」

祥恵は、相原に言われて、森雪からの通話に出た。

「あ、祥ちゃん。どうだった?うまくいきそう?」

「うん。17時から大統領が緊急の会見を開いてくれるって」

「そう、良かったわね」

森雪は、祥恵から事情を聞いて頷いた。

「それじゃ、17時までは、そっちに第二艦橋にいるでしょう?こっちは大丈夫だから。ゆみちゃんも、さっきまで私とずっと楽しくお話をしていたから。疲れちゃったのかな、今は眠ってしまった」

「そうね。私もそっちに戻るよ」

「ううん。祥ちゃんは、17時過ぎまでは、そっちにいなよ。そっちにいる方が安全だから」

森雪は、祥恵に言った。

「わかりました」

祥恵は、森雪の言うことを聞いた。

祥恵は、お母さんのことを第二艦橋での自分の席、戦闘班長の席に座らせた。自分は、補助椅子を戦闘班長席の横に持ってきて、その椅子に腰掛けた。

17時までここで待機だ。

「祥ちゃん、大統領の会見は17時って言ったよな?」

「はい」

祥恵は、古代進に聞かれて答えた。

「相原。17時から大統領の会見だ。会見が始まったら、ヤマト乗組員全員にも会見内容がわかるように会見の映像を、ヤマトの艦内放送でも生で流そう」

「了解しました。そのように艦内放送をセットします」

相原が艦長代理に言われ、艦内放送の設定作業を始めていた。

「古代、お前はどこに行くんだ?」

島大介は、古代進が第二艦橋を後にして出かけようとしているので訪ねた。

「ちょっと船の外、デッキに出てくる。デスラー総統とそこで話す約束をしているので・・」

「そうか。こっちのことは大丈夫だから。デスラーに宜しくな」

島大介が第二艦橋を出て行く古代進に声をかけると、古代進は、島大介に向かって片手を上げて振りながら、出ていった。

 

17時、地球では大統領の会見が始まっていた。

大統領は会見場所に現れるや、まずカメラの前に向かって、初めに頭を深々と下げて謝罪した。

「今回の緊急会見は、貧民、貧民街にまつわることです。貧民というのは、人間とは別の種族と説明して来ましたが、貧民は我々と同じ、全く同じ存在の人間です。貧民などという種族は、地球上にはどこにもいません。我々政府が、勝手に作り上げた嘘の種族です」

大統領の会見に、その場にいた記者たちは驚いていた。会見は、テレビを通じて地球上に生で流れていた。もちろんヤマトの艦内放送にも流れていた。テレビを通じて、会見を見ていた国民たちも大統領の会見に衝撃を受けていた。

「いくら、地球が放射能から解放され、その際の復興に必要だったからとはいえ、貧民にしてしまった皆さんに大変なご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした」

地球政府の大統領は、会見場で頭を深々と下げて謝罪していた。

「ただ今、会見している本会見を持ちまして、地球上にある全ての貧民街の廃止を宣言します。それと同時に、そこにいらっしゃる貧民の皆さんを貧民から解放します。貧民の皆さんの左腕とお尻にある焼き印に関しては、政府指定の病院にて治療で消去させていただきます。また、これまでの貧民の皆さんに対する賠償もさせて頂きます」

大統領は、そう言いきった。

自由につづく

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