今井ゆみ X IMAIYUMI

多摩美術大学 絵画科日本画専攻 卒業。美大卒業後、広告イベント会社、看板、印刷会社などで勤務しながらMacによるデザイン技術を習得。現在、日本画出身の異色デザイナーとして、日本画家、グラフィック&WEBデザイナーなど多方面でアーティスト活動中。

葉山マリーナ

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「ゆみ。この服が似合いそうよ」

お母さんは、葉山マリーナのショップの中で、ゆみに声をかけた。それは、白と赤のストライプのワンピースだった。

「スカートはいや!」

ゆみは、お母さんが手にしているワンピースの下のほうがヒラヒラしているのを見て、お母さんに抗議した。

「そお?お母さん、これ可愛いと思うんだけどな・・」

「へえ、可愛いじゃん。夏っぽくて生地とかも涼しそうだし」

祥恵が、横から入ってきて、お母さんの持っているワンピースを見て言った。

「そうでしょう。可愛いと思うわよね。ほら、お姉ちゃんも可愛いってよ」

「私に買ってよ」

祥恵は、お母さんの持っているワンピースを自分の手に取りながら言った。

「祥恵には、このサイズじゃ着れないでしょう」

「大丈夫よ。ほら、同じ柄でサイズの大きいのもあるもの」

祥恵は、お母さんから受け取ったワンピースをお店のハンガーに戻してから、別のサイズの大きいほうのワンピースを手に取りながら言った。

「あなたに似合うかしら?」

お母さんは、祥恵の手にしている同柄のワンピースの裾を手に取ってみながらつぶやいた。

「ほら、似合うでしょう?」

祥恵は、赤白ストライプのワンピースを自分の身体にあててみせながら言った。

「そう、そうね・・」

お母さんは、あんまり似合っているという顔はせずにつぶやき、祥恵のあてているワンピースを眺めている。

「やっぱり、あなたには身体つきがけっこうしっかりしているから、こういう華奢な感じのワンピースはどうなのかな?」

お母さんは、ワンピースの裾とかを確認しながらつぶやいていた。

「それは、身体つきがしっかりしているのは仕方ないじゃない。私、いつも部活でバスケをやっているのだもの」

祥恵は、あまり似合っていると言ってくれないお母さんに不満そうにしていた。

「おお、ここにいたのか」

葉山マリーナの建物内にあるトイレに行っていたお父さんも店内に入ってきた。

「おお、何。祥恵のワンピース選んでいたのか?なかなか、それ可愛いじゃないか」

お父さんは、今までのお母さんの反応と真逆な反応を口にしていた。

「ほら、可愛いってよ!」

お父さんの反応に嬉しそうにしているのは祥恵だった。

「そうです?この子は、割と身体がしっかりしているから、こういう女の子らしい華奢な服はあんまり似合わないんですよ」

お母さんは、お父さんに言った。

「そうか?そんなことないだろう。普段、ジーンズとか活発な格好しているからこそ、たまに、こういうワンピース着ると可愛いってものだよ」

お父さんは、お母さんに言った。祥恵は、お父さんのその言葉にうんうんと頷いていた。

「祥恵は、これにするのか?」

「え、したいかなって思っていただけ」

祥恵は、お父さんに答えた。

「お母さん、どうだ?」

「そうですね。意外に可愛く見えてはきましたね」

お母さんは、もう一度、ワンピースをあてている祥恵のことをよく見直してから言った。

「ほら、ゆみ。あなたが、このワンピース着ないなら、お姉ちゃんに買ってあげちゃいますよ。いいの?」

お母さんが、ゆみに言った。ゆみは黙って頷いていた。

「全く、ゆみのスカート嫌いにも困ったものね」

お母さんは、ゆみに苦笑しながらも、祥恵からワンピースを受け取りレジに持っていく。

「いい、祥恵。きょう、こんな良いワンピースを買ってあげるんだから、しばらくは新しいものは無しですよ」

「はーい」

祥恵は、お母さんから買ってもらったばかりのワンピースが入った袋を受け取りながら答えた。

「どうかな?」

祥恵は、葉山マリーナのポンツーンに停泊しているお父さんのヨットの中で、さっき買ってもらったばかりのワンピースに着替えをしていた。

「あら、本当!意外に似合うじゃないの!」

お母さんは、祥恵の着ているワンピース姿を眺めながらつぶやいていた。

「でしょう?」

「うん、本当かわいいわ」

お母さんは、折れ曲がっていたスカート部分の裾のところを直してあげながら答えていた。

「お姉ちゃん、可愛いわよね?」

「うん、かわいい!」

ゆみは、ヨットに持ってきたブータ先生のことを抱えながら、祥恵のことを見て頷いた。

「ゆみも、お姉ちゃんとお揃いで着たら可愛いかもよ。買ってあげようか?」

「ううん」

ゆみは首を横に振った。お母さんは、祥恵の着ているのを見て、ゆみも着たいということを期待して聞いたのだが、うまくのってこなかったので残念そうだった。

「それじゃ、ゆみは何を着ていくつもりなんだ?」

お父さんは、ゆみに聞いた。お父さんも少しキレイめのポロシャツにパンツを着ていた。お母さんも、スカートではないが少しきれいめのよそ行きのフレアーパンツにブラウスを着ていた。

「これでいい」

ゆみは、今着ているジーンズを見ながら答えた。

「赤いパンツがあるから、それに着替えましょう」

お母さんは、祥恵のワンピースの着直しを終えると、ゆみのことを着替えさせた。花柄が少し付いた白のブラウスに赤いチェックのパンツだ。キャビンの中には、家族しかいないので、狭いキャビンの中で衝立も扉も何もなくても平気だ。

「結局、うちでスカートで行くのは、お姉ちゃんだけか」

お父さんは、お母さんも、ゆみもパンツを着ているので言った。

「そうですね。ゆみは、どうしてもスカートは嫌いらしいのよ」

お母さんは、お父さんに困ったように言った。

「ゆみって、これから大きくなって大人になっても、ずっとスカートは履かないつもりなの?」

「まあ、良いんじゃないかしら。最近は、女性でもスカートを全く履かない方も、増えてきているみたいですし」

お母さんは、祥恵に言った。

「そうか、ゆみはそれで良いんだ」

祥恵は、お父さんの方を向いて聞いた。

「まあ、まだわからないよ。大きくなって大人になってきたら、自分からスカート履きたいって言い出すかもしれないしな」

お父さんは、祥恵に答えた。

「確かにそうかもね」

祥恵も、お父さんに頷いた。

「まあ、今のところはそういう様子は全くないけどね」

祥恵は、ぜったいにスカートを履かないゆみの頭をポンポンとしながら言った。

高級レストランにつづく

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